相続の開始
1.相続の開始時期
遺産相続が起こるとき、相続の開始時期を押さえておくことが重要です。
相続開始時とは、遺産相続が開始する時点のことです。相続が開始すると、遺産の所有者が被相続人から相続人に移転します。たとえば、不動産や株式の権利などは、被相続人から相続人の全員の共有状態になります。
また、相続の開始時をもって、被相続人の債務も相続人に承継されます。そこで、相続開始後は、債権者は相続人に対して借金の支払いを請求することができます。
それでは、相続の開始時期はいつが基準になるのでしょうか?以下で具体的に見てみましょう。
1-1.死亡時
相続の開始時は、基本的には被相続人の死亡時です。
死亡時が明らかな場合には、相続開始時が問題になることは少ないです。この場合、通常は医師に作成してもらう死亡診断書や死体検案書の記載によって死亡時を明らかにし、その時点を相続開始時とします。
1-2.失踪宣告時
被相続人が死亡していることが明らかでなくても、相続が開始することがあります。それは、失踪宣告をしたときです。
失踪宣告とは、長期間生死が明らかでない場合に、その人を死亡したものとみなす制度です。
失踪宣告には、普通失踪と特別失踪があります。
普通失踪は、生死が明らかでない状態が7年以上続いた場合に認められる失踪宣告です。この場合には、生死が不明になってから7年が経過した時点をもって、死亡したと認定されるので、普通失踪の場合には、失踪から7年が経過した時点で相続が開始します。
特別失踪とは、生命に特に危難が迫っている状況があった場合に認められる失踪宣告です。たとえば沈没した船に乗り込んでいた場合などに利用されます。この場合には、生命に対する危難が去った後1年が経てば、失踪宣告の申立ができます。認められた場合、生命に対する危難が去った時点で死亡したと認定されます。そこで、特別失踪の場合には、生命に対する危難が去った時点が相続の開始時期となります。
1-3.認定死亡時
死亡していることがほとんど確実だけれども、死体が見つからず死亡を証明することができない場合には、役所に申請をして、死亡したものと認定してもらうことができます。この手続きを、認定死亡と言います。認定死亡をしてもらった場合にも、死亡したと認定された時点において、相続が開始します。
2.相続税は、相続開始時を基準に計算する
相続の開始時期は、どのような場面で問題になるのでしょうか?
まず、相続税の計算の場面です。相続税を計算するためには、遺産の評価をしなければなりませんが、不動産などの遺産がある場合には、時々刻々と評価額が変化するので、いつの時点で評価すべきかが問題です。
相続税の計算の際には、相続開始時の時価を基準として、遺産の評価を行います。
これに対し、民法上の遺産分割の場合には、遺産分割時の時価を基準として評価します。
3.相続税の申告期限は相続開始時から10ヶ月
相続開始時は、相続税の申告期限との関係でも問題となります。相続税の申告と納税は、相続開始後10ヶ月以内と定められています。この間に申告だけではなく納税まで済ませてしまわないといけません。遅れると延滞税を課税されてしまうので、注意が必要です。
4.相続放棄の時期
相続放棄にも期限が定められています。ただ、これは相続開始時から起算するとは限りません。相続放棄の期限については、相続が開始したことと、借金などの何らかの相続財産があったことを知ってから3ヶ月以内にすべきと考えられています。
そこで、相続開始後しばらくしてから何らかの遺産があることを知ったなら、その時点から3ヶ月以内に相続放棄すれば良いことになります。
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