同時死亡の推定
1.同時死亡の推定とは
同時死亡の推定とは、複数の人が死亡したときに、どちらが先に死亡したかがわからない場合には、同時に死亡したことが推定されることです。民法32条の2に規定されています。
たとえば、父親と子どもが同じ自動車に乗っていて交通事故に遭った場合、発見されたときには2人とも死亡していたとします。この場合、どちらが先に死亡したのかが立証できないなら、父と子どもは同時に死亡したとされます。
ただし、これは推定なので、後にどちらかが先に死亡したことが明らかになった場合には、推定が覆されて、死亡の先後関係が明らかになります。たとえば先ほどの父親と子どもの交通事故のケースでも、後に目撃者が現れて、父親は即死だったけれども子どもはしばらく生きていたことがわかったら、父親が先、その後に子どもが死亡したことになります。
2.同時死亡の場合の相続関係
同時死亡の場合には、相続関係も問題になりやすいです。
父親と息子など、相続人と被相続人が同時に死亡したとき、相続関係はどうなるのでしょうか?
この場合、死亡者間における相続は発生しません。相続が起こるためには、被相続人がなくなったときに相続人が生きていなければならないという原則があるためです。
そこで、明らかに同時に死亡した場合だけではなく、同時死亡の推定がはたらく場合にも、死亡者間での相続は発生しません。ただ、相続人に子どもがいる場合には、代襲相続が起こります。
たとえば、父親と息子が交通事故で死亡して、父親には妻と子ども2人(息子と娘)、息子には妻子がいたとします。
この場合、もし父親が先に死亡したら、息子と母親が父親の遺産を相続しますし、その後息子が死亡したら、その遺産を息子の妻と子どもが相続します。しかし、同時死亡の推定により、息子は父親の遺産を相続しません。そうなると、父親の遺産は、父親の配偶者であり母親と父親の他の子どもである娘(息子の姉または妹)に相続されます。ただし、息子の子ども(父親から見ると孫になる)に対しては、代襲相続が起こります。
このように、同時死亡の推定が働くことにより、息子の妻は父親の遺産については一切相続できなくなっています。
ただし、後に父親が息子より先に死亡していたことがわかったら、父親の遺産を息子が相続し、それを息子の妻と子どもが相続するので、息子の妻も遺産を相続をします。
なお、これは父親の遺産に限った問題であり、息子の遺産を息子の妻と子どもが相続できることは当然です。
3.同じ事故が原因で、どちらかが先に死亡したケースでは推定は働かない
同時死亡の推定がはたらくケースは、飛行機事故で親子が死亡した場合などが典型例なので、「同じ事故が原因で被相続人と相続人が傷つき、どちらかが先に死亡したケースでは同時死亡の推定ははたらかないのか?」という疑問を持たれることがあります。たとえば、同じ飛行機事故で親子が傷害を負い、まず父親、その後2,3日して息子が死亡したケースです。
この場合、推定は働きません。同時死亡の推定は、あくまで死亡の前後がわからない場合に適用される規定なので、どちらが先に死亡したかが明らかにわかるのであれば、その事実が優先されるためです。同じ事故が原因だからといって死亡時が同じになるという意味ではないので、正確に理解しておきましょう。
「相続の用語解説」の記事一覧
- みなし相続財産
- プラスの相続財産
- 一般危急時遺言(一般危急時伝言)
- 不動産登記
- 代償分割
- 代襲相続、代襲相続人
- 任意後見契約
- 任意認知、強制認知
- 保証人
- 借地権
- 借家権
- 債権債務
- 全血の兄弟姉妹と半血の兄弟姉妹
- 公正証書遺言
- 公証人
- 共同相続(人)
- 内縁
- 再代襲
- 再転相続
- 包括遺贈
- 協議分割
- 単純承認
- 受遺者
- 同時死亡の推定
- 失踪宣告と相続の関係
- 嫡出子
- 実子と養子
- 寄与分
- 審判分割
- 年金受給権と相続税
- 強制認知
- 形見分け
- 成年後見制度
- 戸籍
- 戸籍の附票
- 所有権
- 抵当権と相続
- 指定相続分
- 推定相続人
- 推定相続人の廃除
- 換価分割
- 改製原戸籍
- 普通養子縁組
- 検認
- 死因贈与
- 法定単純承認
- 法定相続人
- 法定相続分
- 準確定申告
- 物上保証人
- 特別代理人
- 特別受益(者)
- 特別縁故者
- 特別養子縁組
- 特定遺贈
- 現物分割
- 直系血族と直系卑属、傍系血族
- 相続
- 相続の開始
- 相続人
- 相続人の廃除
- 相続債権者
- 相続分
- 相続分の取戻権
- 相続分の無いことの証明書
- 相続分の譲渡
- 相続回復請求権
- 相続放棄
- 相続時精算課税制度
- 相続権
- 相続欠格
- 相続登記
- 相続税
- 相続税節税と贈与
- 相続財産
- 相続財産法人
- 相続財産管理人
- 相続関係(説明)図
- 祭祀財産
- 秘密証書遺言
- 考慮期間(熟慮期間)
- 自筆証書遺言
- 調停分割
- 負担付贈与
- 負担付遺贈
- 財産分離
- 遺産
- 遺産分割
- 遺産分割協議
- 遺産分割協議書
- 遺留分
- 遺留分の放棄
- 遺留分減殺請求
- 遺言
- 遺言の検認
- 遺言執行者
- 遺言執行者の選任
- 遺言執行者遺言執行人
- 遺言者
- 遺言認知
- 遺言開封
- 遺贈
- 遺贈義務者
- 配偶者
- 限定承認
- 限定相続(限定承認)
- 除籍
- 非嫡出子