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相続回復請求権

1.相続回復請求権とは

相続回復請求権とは、相続人が相続権を侵害された場合に、その取り戻しをすることができる権利です。

相続人は、遺産を相続する権利を持っていますが、何らかの事情でその権利が侵害されることがあります。遺産の対象である財産を第三者が勝手に自分のものとしている場合などの問題です。

例を挙げると、実際には親子ではないのに、子どもであるなどと主張して、遺産を取り込んでしまっている場合などがあります。この場合、真の相続人は相手に対し、相続回復請求権を主張して、相続財産を取りもどすことができます。
 
 

2.相続回復請求権の相手

相続回復請求権を請求する相手は、どのような人が予定されているのでしょうか?

相続回復請求権の相手として予定されていたのは、もともとは「表見相続人」と呼ばれる人です。表見相続人とは、一見相続人のように見えるけれども、実際には相続人ではない人のことです。たとえば、もともと相続人であった子どもが、父親を虐待したために相続人の廃除を受けて、相続人ではなくなっていた場合などのケースが考えられます。このとき、廃除された子どもが自分も相続人だと主張して遺産の一部の預貯金を取り込んでしまった場合などには、他の真正な相続人は、その子どもに対して相続回復請求権を主張して、預貯金の取り戻しを請求することができます。表見相続人には、このほか、以下のような人があてはまります。
 

  • ・相続廃除された推定相続人
  • ・虚偽の出生届によって子どもとなっている人
  • ・虚偽の認知届によって子どもとなっている人
  • ・無効な養子縁組によって養子になった人

 
また、判例によると、相続回復請求権の相手は、表見相続人ではなく他の共同相続人も含むと考えられています(最大判昭和53年12月20日)。共同相続人であっても、自分の遺産取得分以上に多くの遺産を取り込んで離さないケースがあります。たとえば、兄弟3人概算相続をするとき、長男が遺産のすべての現金や預貯金、骨董品、貴金属などを取り込んでしまって他の相続人らに一切渡そうとしないようなケースです。

このような場合には、相続人はその共同相続人に対し、取り込まれた遺産の取り戻しを請求することができます。
 
 

3.相続回復請求権の時効

相続回復請求権には、時効があります。具体的には、相続人が相続権の侵害事実を知ったときから5年、または相続開始時から20年で相続回復請求権が時効消滅します。

ただし、消滅時効を援用出来るのは、自分に相続権がないことについて善意無過失な侵害者のみとされています。そこで、共同相続人が他の相続人の相続分を侵害していたようなケースでは、相続回復請求権の時効を援用することができないことがほとんどとなります。

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