包括遺贈
1.包括遺贈とは
包括遺贈とは、遺言によって特定の人に対し、包括的に遺産の全部や一部を与えることです。
遺贈とは、遺言によって財産を特定の人に残すことですが、遺贈には包括遺贈と特定遺贈があります。
包括遺贈では、遺産の取得割合を示して遺贈を行います。たとえば、一人の子どもに対し「遺産を全て遺贈する」という遺言を残していた場合や、お世話になった人に対して「遺産の4分の1を遺贈する」という遺言を残していたら、それは包括遺贈です。
これに対し、特定遺贈とは、遺産のうち特定の財産を指定して、遺贈する方法です。たとえば、1人の子どもに対して、「〇〇の不動産を遺贈する」という遺言をした場合や「△△の預貯金を遺贈する」などの遺言をしていたら、それは特定遺贈です。
包括遺贈と特定遺贈は似ているのですが、法律的な効果はかなり異なります。
包括遺贈の場合には、遺産全体を割合的に受けとることになるので、その立場が法定相続人と非常によく似ています。そこで、民法では、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)と定められています。
そこで、包括遺贈を受けた受遺者は、遺産分割協議に参加して遺産分割をしなければなりませんし、遺産の中に借金などの負債が含まれている場合には、その負債も相続してしまいます。
遺産相続をしたくない場合には、法定相続人が相続放棄するときと同様、家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。
相続放棄の期間は自分のために遺贈があったことを知ってから3ヶ月以内ですから、その手続きをしないと、遺贈の割合の分、借金を引き継いでしまい、債権者に支払をしなければなりません。
また、包括受遺者は遺産相続をしたとき、登記をしない限り第三者に対抗することができません。そこで、遺産分割協議をした結果不動産を相続することとなっても、登記をしないうちに第三者に売却されたら、不動産の所有権を主張できなくなってしまいます。
また、農地の所有権移転を行うときには、基本的に知事の許可が必要なのですが、包括遺贈によって農地を譲り受けるときには、農地法にもとづく許可が不要とされています。
2.包括受遺者が相続人と異なる点
包括受遺者が相続人と異なる点もあります。
まず、相続人は当然自然人のみですが、包括受遺者は、法人でも良いこととなっているため、被相続人は法人に対し、「遺産の〇分の〇を遺贈する」などと遺言をすることで、法人に財産を受け渡すことができます。
また、包括受遺者には代襲相続は認められません。代襲相続とは、相続人が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、死亡している相続人の子どもが代わりに相続をすることです。たとえば、子どもが親より先に亡くなっていた場合、その後に親が亡くなったら、孫が子どもの代わりに遺産相続をします。
包括遺贈の場合、受遺者が被相続人より先に亡くなってしまったら、遺贈の効果は発生しません(民法994条1項)。そこで、受遺者以外の他の相続人が遺産を相続することとなります。
ただし、受遺者が法定相続人でもある場合には、法定相続分についての代襲相続が認められます。
たとえば、子どもの法定相続分が2分の1のケースで、遺言によってその子どもに「3分の2の遺産を遺贈する」と書かれていたとします。この場合、子どもが親より先に亡くなったら、3分の2の包括遺贈の部分は無効ですが、もともとの2分の1の相続分は有効です。そこで、孫がいたら、その孫が代襲相続によって、2分の1の法定相続分を相続します。
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