負担付贈与
1.負担付贈与とは
負担付贈与とは、贈与をするとき、受贈者に何らかの義務を課し、それを条件に財産を譲る契約です。
たとえば、住宅ローン債務を負担してもらう代わりに家を贈与する場合などです。
負担付贈与が行われたとき、贈与者には、受贈者の負担を限度として売主と同じ瑕疵担保責任が発生します(民法551条2項)。また、双務契約についての規定が準用されるので、(民法553条)、受贈者が負担を果たさないときには、贈与者は負担付贈与の契約を解除できます。双務契約とは「双方が義務を負う契約」のことであり、これに対する言葉が、「一方が義務を負う契約」を表す「片務契約」です。
通常の贈与の場合には、贈与者と受贈者は、対価的な関係にならないので片務契約なのですが、負担付贈与の場合には、負担を限度として贈与と負担との間に対価的な関係が発生するため、双務契約に関する規定が準用されています。
2.負担付贈与と負担付死因贈与
負担付贈与の1種として、負担付死因贈与があります。死因贈与とは、贈与者の死亡を原因として効力が発生するタイプの贈与契約です。
死因贈与は贈与ではありますが、遺贈に近い性質があるため、贈与税ではなく相続税の課税対象になりますし、遺贈に関する規定が準用されます。
2-1.遺言執行者について
死因贈与には遺言執行者の選任についての規定が準用されるため、遺言執行者を指定しておけば、死因贈与にもとづく不動産の所有名義移転などの手続きをしてもらうことができます。
2-2.遺言(死因贈与)の撤回について
遺言の撤回についての規定も準用されるので、死因贈与は撤回可能となっており、贈与者は、いつでも死因贈与を撤回することができます。
ただし、負担付死因贈与の場合において、すでに義務が履行されているのに撤回を認めると、義務を果たした受贈者が大きな不利益を受けるため、受贈者が負担の全部やそれに近い程度の義務を果たした場合には、贈与者は死因贈与を撤回することが認められません。
2-3.相続人による取消請求について
贈与者が死亡した後、相続人が死因贈与の取消をすることができるケースもあります。
具体的には、受贈者が義務を果たさない場合、他の相続人は受贈者に対し、相当期間を定めて義務を果たすように催告し、その期間内に受贈者が負担を履行しないときには、相続人は家庭裁判所に対して負担付死因贈与の取消を請求することが可能となっています。この規定も、負担付遺贈の規定が負担付死因贈与に準用されています。
2-4.負担の範囲
負担付死因贈与が行われたとき、もらえる遺産に比して負担が重すぎると、受贈者に不利益があります。そこで、受贈者は、受けとる遺産の範囲内において義務を果たせば足りますが、この点も、負担付遺贈のケースと同じです。
3.負担付贈与と負担付遺贈の違い
負担付贈与は負担付遺贈によく似ているので、混同されることも多いのですが、何が違うのか確認しましょう。
まず、負担付死因贈与が成立するためには、贈与者と受贈者が合意して「契約」をしなければなりませんが、遺贈の場合、遺贈者の一方的な意思表示でよく、受贈者の同意は要りません。
これは、死因贈与は「贈与契約」という契約ですが、遺贈は遺言による一方的な行為だからです。
また、負担付死因贈与は、契約書などの書面を作成しなくても成立しますが、負担付遺贈は「遺言書」を作成しないと行うことができません。
さらに、放棄についての取扱も異なります。負担付遺贈の場合、受遺者は遺贈を受けずに放棄することが可能なので、負担が重いと感じたら、放棄をして遺贈を受けない代わりに負担履行も免れることができます。これに対し、負担付死因贈与の場合、受贈者も了承をして契約を行っている以上、死因贈与を放棄することが認められません。
以上のように、負担付死因贈与は、負担付遺贈と似ている面もありますが異なる点も多いので、ケースに応じて最適な方法を選択して利用する必要があります。
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