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特別受益(者)

1.特別受益とは

特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から特別に利益を受けた場合の受益分のことです。特別受益を受けた人を特別受益者(受益者)を言い、特別受益があると、受益者の遺産取得分は本来の相続分よりも減らされます。

遺産相続が起こるとき、本来なら、法定相続人が法定相続分に応じて遺産を相続するのが原則です。ただし、相続人の中に、被相続人から多くの贈与や遺贈を受けた人がいる場合、単純に法定相続分に応じて遺産分割をするのが不公平になる可能性があります。

たとえば、父親が死亡した場合で兄弟4人が相続人になっているとします。このとき、長女は結婚するときに父親から家を買ってもらっており、長男は事業を開業するときに父親から多額の事業資金を出してもらったことがあるとして、次男と次女は何ももらっていないとします。この場合、本来の法定相続人は、兄弟4人がそれぞれ4分の1ずつですが、長男と長女はそれぞれ父親から不動産やお金の贈与を受けているので、単純に4分の1ずつにすると不公平になります。そこで、特別受益の考え方によって、長男と長女の遺産取得分を減らして、その分次男と次女の遺産取得分を増やし、全体の公平をはかることができます。
 
 

2.特別受益が認められる場合

特別受益が認められるのは、どのようなケースなのでしょうか?
これについては、遺贈や贈与があったときに認められます。贈与については、結婚や養子縁組の際に行われたものや、生計の資本として行われたものが対象です。

生前贈与について、特に期限は設けられていません。死亡の何十年も前に贈与した不動産や金銭などについても、特別受益と認定されます。

また、特別受益の受益者となるのは、相続人のみです。被相続人が相続人以外の人に財産を遺贈したり贈与したりしても、それが特別受益になることはありません。
 
 

3.特別受益の評価時

特別受益の評価基準時は、相続開始時です。

たとえば、不動産などの財産の場合、相続開始時から遺産分割時までの間に価格が変動することがあります。この場合、特別受益については、相続開始時を基準とするので、相続開始後不動産の価格が値上がり・値下がりしていても、それを評価することはできません。

これに対し、遺産分割における財産評価時は、遺産分割時の時価となります。

そこで、特別受益が問題になる場合、遺産の内容となっている不動産と特別受益の対象となっている不動産において、価格の評価時期が異なるので、注意が必要です。
 
 

4.特別受益の計算方法

最後に、特別受益の計算方法を確認しましょう。

この場合、遺産全体の金額に特別受益を受けた財産の額を足して、それを各自の法定相続分に応じて配分します。この計算方法を、特別受益の持ち戻し計算と言います。

具体例を見てみましょう。

父親が死亡し、子どもたち3人が相続人になっているとします。遺産の額は3000万円、長男に600万円の特別受益があるとします。このとき、まず長男の特別受益の600万円を持ち戻して、分割の対象となる遺産の価格は全体で3600万円となります。

そして、これを3分の1ずつに分けるので、兄弟3人はそれぞれ1200万円分を取得します。ただ、長男はすでに600万円をもらっているので、長男は600万円、次男1200万円、3男が1200万円を受けとることができます。

このように、特別受益の持ち戻し計算をすることによって、長男の受益が正当に評価されて、兄弟3人が平等に遺産を相続することができます。

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