代償分割
1.代償分割とは
遺産相続をするとき、遺産の中に不動産が含まれていることが多いです。その場合、遺産分割協議によって、不動産の分割方法を決めないといけません。その方法の1つが代償分割です。
代償分割とは、特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人に対してその代償金を支払う遺産分割の方法です。
たとえば、2000万円の価値がある不動産があり、4人の相続人がいるとします。この場合、不動産は1つしかないので、1人が不動産を相続すると、他の3人は何ももらえなくなってしまいます。それでは不公平なので、不動産を取得した人が、他の3人に対してお金を払って精算をします。
不動産の価格が2000万円で相続人が4人なので、それぞれの相続人の取得額は500万円です。そこで、不動産をもらう相続人は、他の3人の相続人に対し、500万円ずつ現金で支払をします。
2.代償分割の方法
代償分割をするときには、相続人が集まって遺産分割協議を行い、全員が代償分割による不動産の遺産相続について、合意をする必要があります。このように当事者同士で話合いをして決定する場合、代償金の支払い方法について、分割払いにすることも可能です。
ただ、代償分割の合意をするためには、前提として不動産を適切に評価しなければなりませんし、代償金の支払い方法についても全員が合意しなければなりません。
不動産の評価は一律ではないため、相続人間で意見が合わないことがありますし、お金の支払い方法についても、いつまでに支払うべきかや、一括払いができない場合に分割払いを認めるかどうか、いつまでの分割払いにするかなどについて、問題になります。
こうしたハードルを乗り越えて、全員が合意出来た場合にのみ代償分割ができます。
合意ができたときには、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書があったら、不動産の相続登記をすることができます。
3.代償分割のメリット
代償分割には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
まず、不動産を公平に分割できます。不動産の遺産分割の方法としては、不動産をそのまま誰かが取得する現物分割の方法がありますが、これによると、特定の相続人が高額な不動産を取得してしまうので、他の相続人との間で不公平になってしまいます。代償分割は、代償金が支払われるので公平です。
次に、代償分割をすると、不動産という資産を失わずに済みます。不動産の遺産分割方法としては、不動産を売却して売却金を相続人間で分配する換価分割の方法がありますが、これによると、不動産は失われてしまいます。また、売却金から経費を引かないといけないので、受けとる金額も低くなりますが、代償分割の場合、手元に不動産を残せるので、そうした損失も発生しません。
4.代償分割のデメリット
次に、代償分割のデメリットも確認しましょう。
代償分割をするときには、不動産の評価が問題になります。不動産の評価方法については、市場価格であっても一律ではないため、相続人間で意見が合わずにトラブルになりやすいです。不動産を取得する人は低めに見積もりを出しますし、代償金を受けとる人は、高めに見積もりを出すでしょう。
また、代償金を支払う人に資力がないと、利用できない点もデメリットです。不動産を取得したいけれども代償金を支払えないという場合には代償分割ができないので、換価分割をして不動産を売却せざるを得なくなることも多いです。
遺産に不動産が含まれていたら、遺産分割の方法に工夫が必要です。
悩んだときには、弁護士などの専門家に相談しましょう。
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