借家権
1.借家権とは
借家権とは、賃貸借契約を設定して建物を借りている場合の借主の権利です。
たとえば、アパートを借りて住んでいる場合や、一戸建ての建物を借りて住んでいる場合などがこれに該当します。
借家権には、一般の借家権と定期借家権があります。一般の借家権の契約をするときには1年以上の契約期間を定める必要があり、契約期間が満了したときには原則として契約が更新されます。賃借人が更新を拒絶することはできますが、大家が契約の更新を拒絶しようとすると、正当事由が必要になります。
1年未満の期間を定めた場合には、「期限の定めのない契約」という扱いになり、事実上大家からの解約が非常に難しくなります。
定期借家権の場合には、1年未満の契約期間を定めることも可能ですし、契約期間が満了すると、更新が行われず、当然に契約が終了します。定期借家権は、大家にとって有利になる借家権の設定方法です。
2.借家権は相続の対象になる
被相続人が借家権を有していた場合、借家権は相続の対象になります。借家権にも経済的な価値があると考えられるからです。
借家権を相続するとき、特別な手続きは不要です。
賃借人が何もしなくても賃貸借関係は継続しますし、契約書の書き換えも不要です。
賃貸人による承諾も不要ですし、更新料や承諾料などの金銭を支払う必要もありません。賃借人が死亡すると、大家が相続人に対し、承諾料や更新料などの支払いを求めてくることがありますが、相続人としてはそのような要求に応じる必要はありません。また、相続を機に賃料を増額する必要もないので、大家が賃料増額を打診してきたときも、応じる必要はありません。
賃貸借契約についても、相続人名義に書き換える必要はありませんが、作成し直した方がやわかりやすくなるので、従前と同様の内容で(契約者の名義のみ変更する)、作り直しておくと良いでしょう。
3.借家権の評価方法
借家権は、相続の対象になりますし、経済的な価値を持っています。そこで、借家権も相続税の課税対象になります。
そうだとすると、借家権の相続税評価はどのようにして行うのかが問題です。
この場合、建物全体の相続税評価額に対し、借家権割合をかけ算することによって借家権の価値を算出します。
建物全体の相続税評価額は、建物の固定資産税の評価額となります。そして、借家権割合は、その建物が存在する場所によって異なりますが、多くの地域で20%か30%となっています。
たとえば、建物の固定資産税評価額が500万円、借家権割合が30%の場合に賃借人が死亡した場合、借家権の評価は、500万円×0.3=150万円となります。
4.借家権を設定すると、土地の相続税が下がる
次に、借家権を設定している賃貸人が死亡した場合について考えてみましょう。この場合には、建物を賃貸していない場合よりも建物の相続税評価額が下がります。賃貸に出していると、借家権割合の分、建物の評価額が減額されるからです。
たとえば、500万円の建物で、借家権割合が30%の場合には、建物の相続税評価額は350万円となるので、建物をそのまま相続するよりも相続税を節税することが可能になります。
不動産を所有していて相続税を節税したい場合には、建物を人に貸して、借家権割合の分、相続税評価額を下げることが有効な対処方法となります。
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