一般危急時遺言(一般危急時伝言)
1. 一般危急時遺言とは
一般危急時遺言とは、遺言者が病気やその他の理由によって死亡の危機に瀕している場合に、特別な方法ですることができる遺言です。
遺言には、普通方式遺言と特別方式遺言の2種類があります。
通常のケースでは、普通方式遺言が利用されます。一般でよく利用される自筆証書遺言や公正証書遺言は普通方式遺言の1種です。これに秘密証書遺言を足した3種類が、普通方式遺言になります。
これに対し、緊急性がある場合にのみ認められる特別な方式の遺言が特別方式遺言です。
一般危急時遺言は、このような緊急性がある場合に認められる特別方式遺言の1種です。
特別方式遺言には、ほかに「伝染病隔離者の遺言」や「在船者の遺言」、「船舶遭難者の遺言」があります。
2. 一般危急時遺言の方法
一般危急時遺言が認められるには、以下のとおりの要件を満たす必要があります。
- ・疾病(病気)その他の事由により、遺言者に死亡の危急が迫っている
これについては、怪我や病気によって、まさに生命の危機が訪れているようなケースが対象になります。ただし、生命の危機があるかどうかの判断については、医師による必要はありません。 - ・証人3人以上の立会がある
証人になれるのは、以下に該当しない人です。 - ➀未成年者
- ②推定相続人、受遺者、それらの配偶者と直系血族
- ③公証人の配偶者や4親等内の親族、書記と使用人
- ・証人の1人に言葉で遺言の趣旨を伝える
- ・遺言の趣旨を聞いた証人がそれを書いて 遺言者と他の証人に読み聞かせるか、書いたものを閲覧させる
- ・すべての証人が筆記内容が正確であることを承認して、 署名押印する
以上のような手続きをとれば、一般危急時遺言ができます。
3. 一般危急時遺言の効力が発生するための手続き
一般危急時遺言は、普通方式遺言の例外であるため効力発生のために一定の手続きが必要になります。遺言が行われても、そのまま何も手続きをしない場合には効力が発生しません。
具体的には、証人の1人または利害関係人が、遺言が行われた日から20日以内に家庭裁判所に対し、一般危急時遺言の確認請求を行うことが必要です。
さらに、遺言者が死亡した後には、効力が発生した一般危急時遺言について、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要もあります。一般危急時遺言の確認と検認は別の手続きなので、一般危急時遺言の確認をして遺言としての効力が発生しても、検認は別途要になり、検認をしないと科料の制裁を科される可能性もあるので、注意が必要です。検認受ける場合には、遺言の開封前に家庭裁判所に検認申立を行う必要があります。
4. 危急状態から回復した場合は?
一般危急時遺言が行われても、その後遺言者が危急状態から回復することがあります。
この場合、遺言者は普通方式で遺言することができるようになるので、一般危急時遺言を認める必要性がなくなります。
そこで、遺言者が普通方式遺言を行うことができる状態になってから6ヶ月間生存したときに、一般危急時遺言は自然に効力を失います。
この場合、遺言者が遺言を残したい場合には、新たに普通方式(自筆証書遺言や公正証書遺言)によって遺言をする必要があります。
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