遺産相続した不動産を売却する手順と注意する事
その他相続財産は現金や預金だけでなく、土地や建物などの不動産である場合も多くあります。
さまざまな理由で相続遺産である不動産を、売却しなければならないこともあるでしょう。
では、遺産として、不動産を受け継ぎ売却するにはどのような手順を踏めばいいのでしょうか?
また、どのような注意点があるのでしょうか?
目次
1.遺産となる不動産の種類
相続財産としてもっとも価値が高いのが不動産です。
相続人が複数いる場合、相続財産をどのように分割するかを決める必要があります。
そのためには、不動産がいくらの価値があるかを知る必要があります。
分割する場合には、不動産鑑定士の評価などを参考にしてもよいですが、通常、相続税の申告で使う評価額をもとに分割します。
一般的に相続税申告において、土地については通常、毎年発表される路線価基準で評価します。
また、建物については固定資産評価額で評価します。
土地や建物などの種類や用途によって評価額は異なります。
遺産となる不動産は下記の通りです。
- 土地
宅地、田畑、山林など。 - 建物
家屋、倉庫、駐車場、店舗など。 - 権利
借地権、地上権など。
不動産の評価額の計算は難しく、高い専門性を要求されます。
評価方法が不明な場合は、早めに弁護士などの専門家に相談した方がよいでしょう。
2.遺産である不動産を相続しても、空き家で放置すると環境問題に
不動産を相続しても、そこに住む人が誰もいないケースがよく見受けられます。
この場合、次のような問題点が生じます。
(1)老朽化し、不動産価値が下がる
居宅は、誰も住まなくなると、すぐに老朽化が激しくなり、不動産価値が年々下がります。
(2)毎年費用がかかり続ける
不動産を所有している限り、
固定資産税や火災保険、地震保険等は支払い続けなければならず、毎年費用がかかります。
(3)危険性が増す
空き家の状態で放置しておくと、家の瓦や壁がはがれるなどの危険性が増したり、不審火などにもつながったりします。
こうしたことを防ぐためにも不動産を有効活用する、もしくは売却する必要があります。
大都市圏のように一定の入居者数が見込まれる場合は、不動産を賃貸することを考えたほうがよいでしょう。
3.遺産相続した不動産を売却する手順と注意点
相続した不動産を売却する手順と注意点は、以下のとおりです。
(1)遺産相続した不動産を売却する手順
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- 不動産を相続する相続人を決める。
- 不動産を相続登記する。
- 売却する不動産の相場を知るために、不動産鑑定士や不動産仲介業者などに査定を依頼する。
- 不動産仲介業者に売却を依頼する。
- 売却価格を設定し、購入者を募集する。
- 購入者と売却条件を交渉する。
- 購入が決定したら、売買契約を結ぶ。
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(通常、このあと購入者側が不動産の所有権移転のための変更登記を行う)
まずは、相続人の間で協議することから始めます。
不動産相続を誰にするかは、相続税の納税にもかかわりますが、後々売却を考える場合がありますから、協議はしっかり行いましょう。
(2)遺産相続した不動産を売却する際の注意点
不動産遺産を相続したとき、よく相続登記をせず手続きを放置状態にしておく場合が見受けられます。
実は、相続冬季には期限がありません。
そのため、手続きが面倒などの理由で、登記手続きを放置しておく場合があります。
ただし、この状態では売却できません。
特に相続登記を放置しておいて、次の相続が発生したら、過去にさかのぼって分割協議を行うなど後々面倒になります。
相続登記は、必ず行いましょう。
4.遺産である不動産売却は、売却益が出れば税金がかかる
遺産相続した不動産を売却したとき、売却益が出れば税金がかかります。
それでは計算方法等を解説します。
(1)譲渡所得税の計算方法
不動産を売却すると、譲渡所得税が発生します。
売却益(譲渡益)が発生したときに課せられる所得税です。
①譲渡所得=売却代金-(取得費+諸費用)
取得費は、不動産を相続した時の価格ではなく、被相続人が不動産を購入したときの代金です。
購入当時の金額や不動産売買契約書が見つからなかった場合、売却代金の5%を取得費とすることができます。
②課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除
特別控除は居住用の場合、3,000万円は特例として控除されます。
この3,000万円控除の特例はよく利用されています。
中古不動産売却のほとんどの場合、控除枠内で所得が収まりますから、譲渡所得税はかかりません。
③不動産物件の譲渡所得は、所有期間に応じ税率が違う
- 長期譲渡所得
譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年を超える土地・建物が対象。税率15%(住民税は5%) - 短期譲渡所得
譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年以下の土地・建物が対象。税率30%(住民税は9%)
(2)相続税の取得費加算の特例について
相続税を申告納税し、遺産となった不動産を売却するとき、さらに譲渡所得税が課せられます。
結果として税金ばかり支払うことになり、負担が重くなるため、「相続税の取得費加算の特例」を利用することで、負担軽減ができます。
この特例は、相続税の一定額を取得費に加算できる特例措置です。
ただし、相続税申告期限の翌日から3年以内に相続不動産を売却し、譲渡所得が発生した場合に限ります。
①特例を受けるための条件
- 相続や遺贈により財産を取得した者。
- 財産を取得した者に相続税が課されていること。
- その財産を相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡していること。
②取得費に加算する相続税額(平成27年1月1日以降)
取得費の加算する相続税額=その者の相続税額×〔相続税の課税価格計算の基礎とした譲渡財産の価格÷(相続税の課税価格+財務控除額)〕
この特例を受けるためには、相続税の申告書の写しなど必要書類と共に、譲渡所得の金額明細書の添付が必要になります。
6.遺産の不動産を売却せず、延納制度を利用して納税・資産運用する方法
遺産となった不動産に愛着があり、売却するつもりがない場合、相続税納付には延納制度を活用できます。
(1)延納することで売却阻止について
遺産相続された不動産は、相続人自ら不動産オーナーとして賃貸物件にすることもできます。
相続税の納税がすぐにできない場合は、国税当局に担保として提供し、最長20年間の分納制度(延納制度)を利用することができます。
(2)相続時には軽減措置を活用しておく
不動産の相続は、相続税申告段階において居住用ならば、小規模宅地に関する軽減措置があり利用できます。
納付段階では延納制度を利用し分納できます。
遺産を大事に守るという意味では、資産活用はできますが、投機的な活用は避けたいものです。
土地だけが広ければ、不動産収入を当て込むため賃貸不動産を立てたり、駐車場事業を行った考えても良いでしょう。
資産運用ができず、延納も利用できないとすれば、放置物件になり兼ねません。
売却検討を行うならば、よく熟慮して売却を進めましょう。
まとめ
遺産としての不動産を売却するには、いくつかの注意点があります。
また、不動産売却は確定申告が必要なことや、所得税がかかるなど、手続きや税金面の計算が面倒です。
相続税および不動産売却に係る所得税の計算は、高い専門性が求められることも多いです。
専門家に依頼することをおすすめします。