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親族間でよく起こる相続トラブルの事例と解決方法

父親や母親、配偶者などの親族が亡くなると、遺産の相続が発生します。
相続ではいろいろなトラブルが起こりがちですが、その中でも多いトラブルが親族間で起こるものです。

相続は何度も経験することではないので、いざ親族間でトラブルがあると頭を悩ませてしまいます。

今回は、親族間でよく起こる相続トラブルの事例と解決方法についてご紹介します。

1.兄弟の間で起こるトラブル

親族間でよく起こる相続トラブルのひとつとしてよく挙げられるのが、被相続人の子供が複数いる場合に、その子供の間で起こるトラブルです。

被相続人の子供の間で起こるトラブルの多くは、相続する財産の割合に対するものがほとんどです。

法定相続割合では同じ割合で相続できるはずが公平な相続にならず、どちらか一方に不公平感が生じることでトラブルが起こります。

特に相続財産に不動産がある場合は、トラブルになりやすいです。

不動産は価値が大きいが分割しにくいもののため、どうしても不動産を引き継ぐ相続人の相続割合が大きくなってしまい、もう一方に不公平感が生じます。

たとえば現預金2,000万円と自宅4,000万円の遺産を相続人の子供である兄弟が引き継ぐ場合、兄が自宅を、弟が現預金を引き継げば、兄4,000万円、弟2,000万円と不平等な相続となってしまいます。

それでは、兄弟間で起こるトラブルの解決方法を解説します。

(1)法定相続割合の知識をつける

この場合の解決方法の第一歩は、まず法定相続割合の知識をつけることです。

相続人の1人に法定相続割合の知識があっても、他の人がその知識がなければ分割協議がうまくいきません。

相続人すべてが法定相続割合の知識を持ち、できるだけ公平になるように分割協議する必要があります。

被相続人に子供がいる場合のよくある相続割合
  • 配偶者と子供1人が相続人の場合

配偶者と子供で1/2ずつ分割

  • 配偶者と子供2人が相続人の場合

配偶者 1/2

子供  1/4ずつ

  • 配偶者なしで子供2人の場合

子供が1/2ずつ分割

(2)相続財産の中に不動産がある場合は、代償分割を検討する

不動産の分割には、現物分割・換価分割・代償分割・共有分割の4つの方法があります。その中でも不動産を売却などせずに、かつ円満に遺産分割できるのが代償分割です。

代償分割とは、公平な分割のためには複数人で分けなければならない不動産を1人の相続人が相続し、代わりにその持ち分に該当するお金を他の相続人に支払う方法です。

たとえば、先ほど見た兄4,000万円、弟2,000万円の不平等な相続の場合、不動産を引き継いだ兄が弟に現金を1,000万円代償すれば、それぞれ3,000万円の相続となりトラブルは起きません。

2.親族の1人が、被相続人の身の回りの世話をしていたときに起こるトラブル

相続人の1人が、介護など被相続人の身の回りの世話をしていたときに起こるトラブルです。

被相続人の身の回りの世話をしていた相続人は、その貢献度を認めてもらうため、他の相続人よりも多い割合での相続を望むことも少なくありません。

他の相続人がそれを認めず法定相続分での遺産分割を求めたり、貢献度についての温度差があったりすると親族間のトラブルに発展することもあります。

それでは、被相続人の世話をしていた相続人がいる場合に起こるトラブルの解決方法について、解決します。

(1)あらかじめ遺言書で多めの分割割合を記載してもらう

相続では、何よりも被相続人の意志が尊重されます。

そのため、相続人は基本、遺言書に記載がある遺産の分割に従う必要があります。

事前に、被相続人の身の回りの世話をしていた人が多めに相続できるような遺産分割を遺言書に記載しておけば、相続時の親族間のトラブルを防ぐことができます。

(2)寄与分を主張する

被相続人の身の回りの世話をしていた相続人の貢献度を遺産分割の割合や金額に反映させ、法定相続分に上乗せすることが民法で認められていて、これを「寄与分」といいます。

寄与分は、まず寄与分を得たい人が遺産分割協議の場で自ら主張する必要があります。

遺産分割協議の場で他の相続人から認められない場合は、裁判所に調停の申立てを行います。

寄与分はその算定方法などが具体的に決まっています。

遺産分割協議の場で寄与分がどれぐらいの金額や割合になるのか、また算定方法などの根拠を示すと話がまとまりやすくなります。

寄与分の計算は複雑なため、寄与分を主張しようと考えている場合はあらかじめ弁護士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。

3.被相続人の兄弟やその子供とのトラブル

被相続人の配偶者と兄弟が相続人となる場合や、その兄弟が死去しているために兄弟の子供の姪や甥などが相続人になる場合に起こるトラブルです。

財産分割において、高い割合を求めてくることなどでトラブルになります。

では、被相続人の兄弟やその子供とのトラブルの解決方法を見てみましょう。

(1)法定相続割合の知識をつける

この場合の解決方法の第一歩は、まず法定相続割合の知識をつけることです。

まず押さえておきたいのが、被相続人に子供や父母などがいる場合には、被相続人の兄弟やその子供は法定相続人にならないことです。

この場合はいくら権利を主張してきても遺産を分割する必要はありません。

被相続人に子供や父母などがいなければ、被相続人の兄弟やその子供が法定相続人になりますが、配偶者は遺産の3/4を引き継ぎ、彼らが相続できるのは残りの1/4だけです。

(2)遺言により、相続割合を決めておく

争いが生じる可能性がある場合は、遺言を残しておくことが効果的です。

法定相続人には、その最低限の生活を保護するために遺留分があります。

ただし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。

もしも、配偶者にすべての遺産を引き継がせるといった遺言を残しておけば、被相続人の兄弟やその子供は遺産を相続することはできません。

4.内縁関係者とのトラブル

相続では、まず相続人の漏れがないかどうか戸籍等を遡って確認します。

親族間のトラブルの中には、その時になって初めて前妻や前妻の子など、知らなかった相続人がいることが分かって起こるものもあります。

また、戸籍等を遡らなくても、前妻や前妻の子に法定相続分以上の財産を引き継ぐという遺言が残っている場合も見受けられます。

それでは、内縁関係者とのトラブルの解決方法を見てみましょう。

(1)法定相続割合の知識をつける

この場合の解決方法の第一歩も、やはり法定相続割合の知識をつけることです。

前妻には相続権はありませんが、前妻の子には相続権があることを理解しておきましょう。

前妻の子と現在の配偶者の子には、以下のような割合の相続分があります。

配偶者と配偶者の子、前妻、前妻の子がいる場合の相続割合
  • 配偶者    1/2
  • 配偶者の子  1/4
  • 前妻の子   1/4
  • 前妻     なし

前妻が相続分を主張する、あるいは前妻の子が法定相続分以上の遺産を主張するようなことがあっても、前妻の子の法定相続分のみを分割すれば問題ありません。

(2)遺留分の知識をつけ、遺留分請求を行う

遺言で、前妻や前妻の子に不当に高い遺産の分割が示されている場合は、最低限の保障である遺留分を請求する必要があります。

遺留分について学び、遺留分請求を行いましょう。

5.生命保険金をめぐる前妻とのトラブル

こちらは、被相続人の生命保険金を前妻が受け取ったときに起こるトラブルです。

今回は被相続人に離婚経験があり、その後再婚したケースで考えます。

生命保険は多くの場合、配偶者を受取人にしています。

もしも離婚後に受取人を変更していない場合は、受取人が前妻のままになっています。

そのため、被相続人の生命保険金を前妻が受けとることになります。

民法では生命保険金は受取人固有の財産とされ、相続財産とはみなされません。

つまり、前妻がもともと持っていた財産とみなされます。

原則、相続人が主張しても引き継ぐことができません。

また、生命保険金が遺産のなかで大きな割合を占めた場合でも、特別な事情がない限り、遺留分が認められることはありません。

それでは、前妻が生命保険金の受取人であるときのトラブル解決方法を解説しましょう。

(1)受取人の変更または解約をする

前妻が生命保険金の受取人である場合は、事前に受取人の変更または解約をするのがいちばんの解決方法です。

前妻が生命保険金を受け取った後では、まったく対処できない可能性もあります。

相続が発生しそうな場合は、生命保険の受取人が誰なのかを確認しましょう。

また、現在受取人がどうなっているか不明な場合は、すみやかに保険会社等に確認するようにしたほうがよいでしょう。

(2)遺留分が請求できるか検討する

生命保険金は受取人固有の財産とみなし、原則遺留分は認められません。

しかし、過去の裁判で保険金があまりにも高額だった場合や、前妻との結婚期間が短かった場合など、ごくわずかな判例ですが生命保険金を含めて遺産分割をやり直すことを認めています。

すでに前妻が生命保険金を受け取った場合は、弁護士などの専門家などと遺留分が請求できるか検討してみるのもよいでしょう。

6.遺産を独り占めしようとする人がいる場合のトラブル

このケースは、遺言書にすべての財産が1人にのみ相続されるように記載されている場合に起こるトラブルです。

相続では被相続人の意志である遺言書が優先されるため、遺産分割をめぐって親族間でトラブルになるケースがあります。

この場合の解決方法は1つです。

遺留分の知識をつけ、遺留分請求を行うことに尽きます。

自分にどれぐらいの遺留分があるかを認識し、適切に遺留分の請求を行います。

遺留分請求は認められた権利のため、きちんと請求すれば独り占めしようとする相続人が拒否したとしても、裁判などで最終的には認められます。

ただし、相続があったことを知った日から1年間、または相続開始の時から10年を経過したときは時効となり、遺留分の請求を行うことができなくなります。

そのため、できるだけ早い段階で弁護士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。

まとめ

相続では、遺産分割をめぐる親族間のトラブルがよく起こります。

相続に関する知識がないと、本来相続できるはずの遺産を引き継げないこともあります。

そうならないためにも普段から相続の知識をつけ、出来るだけ早く弁護士などの専門家に相談するようにした方がよいでしょう。