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マンションが相続財産に含まれている場合の手続きと相続方法を徹底解説

被相続人がマンションに住んでいたとか投資用マンションを持っているというケースは少なくないでしょう。

しかし、通常、相続人はマンションの取引に詳しくないのでいろいろ面倒です。
ここではマンションが相続財産に含まれる場合の手続きや相続方法について解説します。

1.マンションの相続に特有の問題点

(1)ローンの残債の問題

マンションは通常一千万円以上の価格がします。

このため、被相続人が即金ではなくローンを組んで購入している場合がほとんどでしょう。

ローンがどうなるのかは相続人としても心配な点です。

マンションを相続したのは良いけど一千万円以上の借金も背負うのは困ります。

この点、通常、ローンを組む場合は団体信用生命保険に加入し、債務者が死亡した場合には生命保険金からローン残債が支払われることになっています。

但し、ローンや債務者によっては団体信用生命保険に加入していないケースもあるので、この点は相続前に十分に確認する必要があります。

なお、通常であればローンと合わせ抵当権が設定されています。

これは、金銭を貸している銀行等が、債務の弁済がない場合の担保として設定するものです。

団体信用生命保険で清算される場合は抵当権も外されます。

団体信用生命保険で清算されない場合は抵当権も残り、ローン残債が完済されない場合、抵当権が実行されることになります。

(2)不動産としての問題

①固定資産税と都市計画税

不動産には固定資産税と都市計画税が掛かります。

固定資産税は土地や住宅等の不動産を持っている人に課せられる税金です。

納付時点の所有とは関係なく、その年1月1日時点での不動産の所有者に課されます。

都市計画税は市街化区域内の不動産に課せられます。

これも納付時点の所有とは関係なく、その年1月1日時点での不動産の所有者に課されます。

平屋の住宅だと市街化区域外(市街化調整区域と非線引き区域)にあることもあり、その場合、都市計画税は賦課されません。

しかし、マンションの場合は市街化区域内にある場合が多いので都市計画税も賦課されるケースがほとんどです。

こうした税金は高額ではありませんが、年間数万円以上の負担になります。

②相続人が複数いる場合の難しさ

マンションに限りませんが、相続財産が不動産の場合、その引き継ぎには問題が生じます。

誰が相続するかで争いになるからです。

保有せず売却する選択肢もあります。

いずれにしても、相続人への所有権移転登記が必要になります。

③区分所有

不動産と言ってもマンションの場合、全戸を所有しているケースは稀でしょう。

このため、区分所有法が適用され一戸建て住宅とは違う扱いになることもあります。

④管理費・修繕積立金

マンションの場合、ローンの他に管理費・修繕積立金が月々掛かります。

相続があった場合には管理会社と管理組合への手続きも必要になります。

⑤投資用不動産では賃借人がいる場合も

被相続人がマンションに住んでいた場合、話は単純ですが、投資用マンションを持っている場合はマンションの居室に賃借人がいるのが普通です。

この場合、賃借契約も引き継ぐことになります。

継続して賃貸する場合の手続きも必要になります。

⑥相続登記と相続税

いちばん大きな問題は相続登記と相続税ですが、これらについては次項以下に詳述します。

2.マンションの相続登記の手続き

(1)ローンの残債の確認

まず、そもそも相続するか否かを決める必要があります。

このためには、他の相続財産の確認も必要ですが、マンションについてはローンの残債がどうなっているのかを確認します。

前述のように団体信用生命保険で清算されるのが普通ですが、まず、相続するマンションでもそうなのか否かの確認、万が一それでカバーされないのであれば、ローンの残債はいくらなのかをチェックします。

(2)抵当権の内容や処理

マンションの相続の場合、抵当権はローン関係のみのケースが多いと思いますが、ローン関係以外にも抵当権が設定されていることもあり得ます。

これはローン以外に借金があった場合等です。

これは登記を確認すれば記載されていますから、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取って確認します。

(3)遺言または遺産分割協議

相続する場合、遺言があるか否かの確認が重要です。

遺言には公正証書遺言、自筆証書遺言と秘密証書遺言の3種類があります。

公正証書遺言は比較的問題は少ないですが、自筆証書遺言と秘密証書遺言では法的に有効ではない場合もあります。

また、家庭裁判所の検認手続きも必要になるので、遺言らしいものがあった場合は、弁護士等の専門家に相談すべきです。

有効な遺言がある場合は、基本的にはそれに従って、遺産を分配することになります。

例えば、被相続人(亡くなった方)が「長男にマンションを相続させる」とか「そばに住んでいた次女にマンションを残す」などの遺言をしているケースが考えられます。

これが遺留分の侵害にならないのであれば、指定された相続人がマンションを相続することになりますが、マンションは通常、高額なので、マンションが主要な相続財産の場合は、遺留分の侵害になってしまうこともあり得ます。

具体的には被相続人の配偶者、直系尊属、直系卑属等が相続人に入る場合に問題になります。

その計算は多少面倒なので専門家に相談されるのが良いでしょう。

遺留分の侵害になる場合、遺留分減殺請求が可能です。

もちろん、遺留分減殺請求が可能でも、当人(その相続人)が満足なら、その相続内容を受け入れても構いません。

遺言がない場合や遺言とは異なる配分をする場合の手続きは遺産分割協議によります。

遺産分割協議は、相続人の方々が集まってする話し合いです。

話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所(家裁)に調停(遺産分割調停)を申し立てることになります。

調停手続きでも合意に至らなかった場合は審判に移行します。

(4)必要な手続きと書類

①一般的な相続の手続きの必要書類
  • 遺言書
    遺言がある場合のみ。3種類の遺言のうち自筆証書遺言と秘密証書遺言では家裁の検認も必要。
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 法定相続人全員の戸籍謄本
  • マンションを相続する者の住民票と被相続人の住民除票
②遺産分割協議があった場合
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明
③一般的な相続手続きの他に必要な書類
  • 相続したマンションの登記事項証明書(登記簿謄本)
    抵当権の設定状況などマンションの現在の状況を知るため
  • 相続したマンションの固定資産税評価書
    登録免許税を計算するために必要

具体的な手続きは法務局への申請になります。

所有権移転登記は難しい手続きではないですが、専門家に依頼した方が無難です。

なお、所有権移転登記に必要なのが登録免許税です。

基本的に、相続したマンションの固定資産税評価額の0.4%です。

マンションの場合はマンション自体(全体)の評価額に持ち分割合(これは登記簿に記載されています)を掛けたものです。

例えば、このようにして計算した固定資産税評価額が3000万円であれば、登録免許税は12万円です。

賃貸人がいる場合は賃貸借契約書で賃貸条件を確認することも重要です。

3.マンションの相続税

(1)基本的な財産評価方法

土地については基本的に「路線価方式」です(市街地でないと「倍率方式」によることもあります)。

路線価とは、土地が面している道路に対する「路線価」という価格に土地の面積を掛けたものです。これで土地分の価格が計算できます。

また、建物部分に関しては固定資産税評価額がそのまま計算の基礎になります。

(2)マンション特有の計算方法

マンションの場合、上記のようにして計算した価額に持ち分割合(登記簿謄本に記載されています)を掛けます

(3)相続税の計算方法

まず、基礎控除がありますので、それ以下であれば相続税の心配は必要ありません。

基礎控除は、3000万円に(法定相続人の人数×600万円)を足したものです。

相続人が1人なら3600万円、2人なら4200万円です。

遺産総額(借金があれば資産から差し引いた残り)がこれ以下であれば相続税は不要です。

相続税が掛かる場合は、まず、各相続人が法定相続分を相続したと考えて相続税の総額を計算します。

次に、具体的な相続分に応じてそれを割り振って行きます。

(4)いろいろな節税対策

マンションの場合は、それを住居にしていたか否かによっても税額が変わります。

また、一時期、「タワマン節税」なるものがありました。

タワーマンション(高層マンション)の場合、マンションの総額に単純に持ち分割合を掛けるので、眺望の好い高層階では、実勢価格より遥かに低く相続税が計算されることもあったのです。

現在ではタワマン節税への抑制策もありますが、それでもマンションは節税になる余地はまだあります。

(5)換価処分のために相続人一人の名義にして売却した場合の贈与税の有無

マンションを相続したものの、1人に相続させるわけにはいかない場合、代表相続人が形式的に相続してそれを売却して換価し、金銭として相続人に分配することもあります。

この場合、金銭として他の相続人に分配するのに贈与税が掛かるか否かは大きな問題です。

現状では、相続財産の分割協議で、換価分割する意図が明確であるならば、贈与税は賦課されません。

まとめ

マンションの相続は、相続人(の方々)が自分でもできます。

しかし ローン残債があるのか、今後、保有して行くべきか早々に売るべきか、賃貸しているのであれば賃借人との手続きはどうするのか、判断すべき点も多数あります。

不動産に詳しい弁護士に相談を受ければ、専門的なアドバイスを受けられるので安心と言えるでしょう。