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「家族信託」徹底解説!認知症の恐れがある家族の為に財産を安全に管理しよう

「家族信託」という言葉はあまり聞きなれないと思います。
日本では、2007年の信託法の改正によって可能になった仕組みなので、まだ十年くらいの歴史しかありません。

これは、高齢で将来認知症の発症のおそれがある人たちが、安全に財産を保全する仕組みとして、また、望むかたちで相続を実現するための制度として便利な制度です。

以下、家族信託について徹底解説していきます。

1.信託と家族信託

(1)信託とは

信託は街中でよく見かける「○○信託銀行」や「投資信託」の信託のことです。

例えば、A、B、C三人の人がいるとします。

Aさんは財産を持っていますが資産運用は詳しくありません。

BさんはAさんの子供ですが、まだ小さいので財産の運用はできません。

Cさんは資産運用のプロです。

AさんはCさんにお願いしました。

「自分の財産を渡すから、それをBのために運用してほしい。

財産や運用益の一部は手数料として差し上げる」

これが信託の仕組みです。

財産を渡して運用を託す人(委託者;上の例ではAさん)と運用を引き受ける人(受託者;上の例ではCさん)が契約して、運用による利益を得る人(受益者;上の例ではBさん)がその利益をもらうわけです。

財産の所有権はAさんからCさんに移りますが、CさんはあくまでもBさんのために運用しなければなりません。

ある種、財産の管理人のような立場です。

委託者と受益者は同じ人でも構いません。

また、委託者と受益者は複数の人でも構いません。

「○○信託銀行」はたくさんの委託者から集めた資産(信託財産)を運用して受益者(委託者本人の場合も多い)に利益を渡す仕事をしているわけです。

(2)家族信託とは

上に挙げた信託の例はCさんが商売として行っている商事信託ですが、商売ではない、つまり営利目的ではない信託も可能です。

中でも家族間で行われる信託が家族信託になります。

この場合、受託者のCさんは資産運用のプロである必要はありません。

委託者の財産を、受益者である家族のために、適切に管理したり処分すればよいのです。

(3)家族信託の仕組み

親の財産を子が事実上管理しているケースは少なくないでしょう。

しかし、親の財産である以上、その処分行為(売却等)Aまではできません。

家族信託の場合は、財産の所有権が受託者(例えば子)に移転します。

この結果、親が出て来なくても、処分行為である売却等を行うことが可能になります。

つまり、

a.委託者であり、同時に受益者である者(例えば親)→受託者(例えば子)に信託財産の所有権を移転させる契約と

b.委託者がそれを受益者のために管理・処分することを約する契約

とが組み合わさったものが、家族信託契約の基本的なかたちになります。

(4)成年後見との違い

高齢者の財産保全のための制度としては以前から成年後見制度があります。

しかし、この制度では、後見が開始するのは、その高齢者の判断能力が不十分と言える程度に低下することが必要です。

また、家庭裁判所の関与があり、いろいろと利用しにくい制度でした。

これに対し家族信託はいつでも開始できます。家裁の関与も基本的にありません。

その点で当事者からすると「自由度の高い制度になっています。

2.家族信託の活用例

(1)ケース1:自分の認知症が心配

Aさんは高齢のため認知症が心配です。

子供たちに財産を渡したいものの、単純な生前贈与では贈与税を取られてしまいます。

それに贈与したらもう自分のことなど面倒を見てくれないのではないかという不安もあります。

成年後見制度(任意後見)の利用も考えましたが、任意後見では、実際に後見が開始されるためにはAさんの判断能力の低下が必要です。

「認知症を装ってみたら?」と悪友に言われましたが、本当は認知症ではないのに、認知症として扱われるのもしゃくです。

任意後見に加え、財産管理委任契約を結ぶのも一つの方法のようです。

この場合、Aさんに判断能力のあるうちは財産管理委任契約によって、つまり、財産の管理を委任されている受任者が法律行為をします。

判断能力が低下したら任意後見の開始です。

悪くはないのですが、家庭裁判所の関与があり、何かと面倒な気がします。

そこで、子供たちの中でも信頼のおける長女を受託者として家族信託契約を結ぶことにしました。

家族信託の場合、あくまで信託。

つまり、財産は受益者のために使われます。

Aさんは自分を受託者にしたので、財産は自分のために使われるのです。

これなら、財産渡したら姥捨て山なんてことにはなりません。

Aさんは安心しました。

(2)ケース2:障がいのある子供の将来が心配

Bさんには障がいのある一人息子がいます。

Bさんに多少財産はありますが、子供の将来が心配です。

自分自身もいつぽっくり行くかわかりません。

息子も一人で生活はできますが、将来、例えば施設に入所したり、そのために家を売るといった大きな契約などの判断はできません。

Bさんの姪が看護師をしていて、とても息子のことを気に懸けていてくれます。

旦那さんもいい人です。

姪がずっと面倒を見てくれれば安心なのですが、タダでとは行かないでしょう。

と言ってお金を主体の話にしたくありません。

一方で、主体的に財産管理をしてほしいと思っています。

そのためには所有権を姪に移す必要があるでしょう。

そこで、姪を受託者、息子を受益者にして家族信託契約を結ぶことにしました。念のために弁護士に信託監督人になってもらいました。

もちろん、姪は財産を流用するようなことはないのですが、これで安心だとBさんは思いました。

(3)ケース3:税金が心配

Cさんにはかなりの財産があります。

都内の地価の高いところに自宅があるからです。

何人か子供がいますが、相続となるとかなりの相続税がかかってしまいます。

とは言え、現金はそれ程持っていません。

自宅を売って現金にしても、金額が大きく、毎年贈与しても十分な節税はできません。

それに長年住み慣れた家ですし、近所に知り合いも多いので自宅は死ぬまで売りたくありません。

自宅を担保に借金をして金融資産に変えることも考えてみましたが、自分ではその運用もできません。

どこかの会社に任せるにしても判断に苦しみます。

そこで子供たちを受託者、自分を受益者にして家族信託契約を結ぶことにしました。

これならば、死ぬまで自宅に住んでいられます。

(4)ケース4:相続争いが心配

Dさんには息子が2人、娘が1人います。

子供たちは先妻との子。

Dさんは老齢で再婚した妻と暮らしています。

どの子も可愛いのですが、正直、息子たちは現在の妻とあまり仲がよくありません。

自分が死んだら壮絶な相続争いが起こるのが心配です。

娘は妻と仲が良いのですが、息子たちに妻が追い出されそうです。

ちなみに妻には歳の離れた弟もいますが、Dさんはこの弟は嫌いです。

そこで娘を受託者、自分を受益者にして家族信託契約を結ぶことにしました。

自分が死んだ後は、現在の妻を受益者(第2受益者)にします。

これなら現在の妻はずっとこの家に住んでいられます。

また、妻の死んだ後は、信託が終了しますので、妻の弟に財産がわたる心配もありません。

(5)ケース5:事業承継が心配

Eさんはアパート経営者です。

息子にそろそろ企業経営を実体験させたいのですが、実際の資産を引き継がないとなかなか難しいこともわかってきました。

ただ、いきなり、資産を引き継がせるのはかなり心配です。

そこで、家族信託として、息子を受託者、自分を委託者かつ受益者として、1棟のアパートを譲渡しました。

この場合、あくまでも信託ですから、譲渡したアパートを息子が勝手に処分することはできませんが、所有権は息子ですから、実際のオーナーとしての責任が問われます。

また、委託者としていろいろな指図をする権利を持つ契約にすることもできます。

うまくできるようであれば、徐々にアパートを増やしていこうとEさんは考えています。

3.家族信託のメリットとデメリットのまとめ

ここまでの説明で、家族信託のイメージはだいぶできてきたと思います。

そこで、改めて家族信託のメリットとデメリットをまとめてみましょう。

(1)メリット

①信託財産を選択できる

信託銀行への信託では、自宅のような不動産の信託には困難があります。

これに対し家族信託では自宅の信託も可能です。

管理が必要な物件でも構いません。

また、全財産を家族信託の対象にする必要はありません。

ケース3やケース4のように自宅だけを家族信託の対象にすることも可能です。

ケース5のように同種の資産の一部を家族信託の対象にすることができます。

②受託者が親族なので安心感があり、親身な対応が期待できる

民間の信託銀行が信用できないわけではありませんが、基本的には営利事業です。

営利を超えてサービスをしてくれるわけではありません。

これに対して家族信託では、家族・親族という親しみがあります。

また、契約が基本とは言え、家族・親族関係、つまり家族の絆がベースにあります。

もちろん、信託銀行のような専門家ではないので、その点には問題もあります。

しかし、金銭のようなものであれば信託銀行に、不動産であれば不動産を管理する会社に、といった具合に、資産それぞれの適性に合わせた管理運用を、受託者が専門業者にさらに委託することもできます。

要は受益者のための管理運用なので、専門家に任せた方が良いものは専門家に委ねればよいのです。

また、弁護士等の法律専門家を監督に付けることもできます。

これにより、資産の着服や横領も容易に防ぐことができます。

③委託者の判断能力のレベルによらないで即刻スタートできる

成年後見制度(任意後見)の場合は、本人の判断能力の低下が認められるまでは後見開始になりません。

これは本人の意思を尊重するという精神に基づくものです。

しかし、常に本人の判断能力をチェックできるわけではありません。

また、特殊詐欺などは、益々巧妙になっています。

判断能力があっても高齢者なら騙されがちです。

これに対し、家族信託では委託者の判断能力によらず、対象財産の管理や運用を受託者に委ねることができます。

形式上、所有権が移転していますから、委託者が騙されても被害にはなりません。

もちろん、受託者にもよりますが、高齢者を詐欺被害や判断ミスから救う制度だと言えるでしょう。

④通常の遺言ではできない財産のコントロールが可能

通常の遺言では、相続時の相続人への財産の分配までしかコントロールできません。

例えば、息子や娘から孫への分配まではコントロールできません。

これに対して、家族信託はこうした息子や娘から孫への相続(「二次相続」と言います)などもコントロールできます。

また、ケース4のように、妻には家を使わせたいが、実家筋に財産が移動するのは避けたいという場合、自分の直系卑属に財産を家族信託し、所有権を直接に直系卑属に移動するというやり方が可能です。

この結果、妻には自分の死後も住宅を使わせつつ、財産の妻の実家への移動を回避できます。

また、このやり方は、遺産分割による停滞を避けることにも使えます。

一般に、相続が開始されると遺産分割協議が行われますが、この分割協議がもめる場合が多いわけです。

しかし、家族信託で予め所有権移転を伴う委託をしておけば、かなりこの種の紛争を回避できます。

例えば、分割が難しいもの(家など)をそのまま残して逝きたい場合には、家族信託は有効な方法です。

もちろん、遺言で分割のやり方をある程度規定することもできます。

また、家族信託でも遺留分までは冒せません。

ただ、生前にきちんと家族信託を設計しておけば、かなりの自由度で思い通りの相続が実現できます。

➄事業承継にも利用が可能

事業承継も相続同様頭の痛い問題です。

せっかく築き上げた事業を安易に引き渡してもすぐに潰れたというのでは意味がありません。

ある程度、コントロールの利く状態で事業を承継して、様子を見ることも必要です。

ただ、単純な譲渡では生前贈与で高い贈与を納付しなければならないこともあります。

また、所有権が移転されたのをいいことに好き勝手されたり、自分の意図しない経営方針に転換されては困ります。

事業を譲渡しつつコントロールを利かせる、その方法として家族信託はかなり有効な方法です。

⑥自由度が高い

以上のことに共通するメリットですが、家族信託は契約関係なので、基本的にかなり自由な設計ができます。

前述のように、二次相続も、さらに三次相続までコントロールできるわけです。

(2)デメリット

①しっかりした知識がないと難しい

自由度が高いということは、逆に言えば、難しい仕組みも作れるということです。

いわば一種のプログラムのようなものです。

知識があれば、非常に高度なものができる反面、知識がないと稚拙で使いにくいものにしかなりません。

例えば、家族信託そのものは節税にはなりません。

しかし、生前の節税対策はいろいろあります。

これを家族信託と組み合わせることで節税にも使えます。

もっとも、この点は税の専門家の知識がないと難しいでしょう。

また、そもそも家族信託の受託者となる人も資産運用の知識が必要になってきます。

資産運用の専門家に丸投げするだけなら、わざわざ家族を受託者にする意味が乏しいでしょう。

さらに言えば、相続では遺留分が、契約にはいろいろな法規が絡んできます。

こうしたものをクリアするプランを考えるのは法律の専門家です。

こうした点では、自分で設計してプランを立てるというよりは、弁護士や税理士、FPなどのチームに相談して、自分や家族に合った家族信託計画をたて、それを実行していくのが重要です。

また、家族信託をつくって終わりではなく、そうした専門家に、その遂行を監督してもらうのも、この「知識が必要」というデメリットを解消する方法です。

②受託者の選択が重要

そもそも受託者がいなければ家族信託は成立しません。

しかし、受託者がいい加減な人だったり、自己中心的な人だと、せっかく家族信託にした意味がなくなってしまいます。

また、「私の方が資産運用に詳しいのに、なんであいつを受託者にしたんだ」といった争いも起こりがちです。

こうした点では、単に長男や長女、という長幼の順ではなく、専門家にも相談してきちんとした受託者を選び、上記のように、それを監督してもらうのがこのデメリットを解消する方法になります。

③家族信託が万能ではない

成年後見制度(任意後見)や遺言に比べてできることの多い家族信託ですが、あくまでも資産の管理運用がその内容です。

身上監護といった身の回りの世話まで受託者に委ねることはできません。

こうしたことは基本的には成年後見制度(任意後見)や遺言で規定すべきことです。

もちろん、家族信託でもその目的に身上監護的な内容を間接的に含める(例えば、資産の一部を受益者のため、介護施設や介護サービスに使う)ことも可能ですが、財産の管理運用とは別に成年後見制度(任意後見)や遺言で規定した方が見通しのよいものになります。

こうした点でも、弁護士などの専門家に相談して、家族信託だけでなく任意後見等も併せて利用する、目的に合った相続計画をたて、それを実行していくのが重要です。

4.家族信託の方法と注意点

家族信託のやり方については以下のような点が問題となります。

  • いつやるのか(開始時期)?
  • 誰を受託者にするのか(受託者)?
  • 何を信託するのか(信託財産)?
  • 何のためにするのか(家族信託の目的)?
  • どんな手続きが必要なのか(手続き)?
  • いくら掛かるのか(費用)?

一部は前項で説明してきました。

手続きとしては、基本的に契約(遺言など単独行為で行うこともある程度は可能)なので、シンプルなものであれば、簡単です。

費用も契約書を交わすだけの話です。

もっとも、「家族で契約書をつくりましたので、預金を移してください」と銀行に行っても、まず、取り合ってくれません。

このため、契約内容に公証性を持たせるために公正証書をつくる必要がでてきます。

その他、不動産を譲渡するのであれば、不動産の所有権移転のための手続きが必要です。

いずれにせよ、家族信託の本質は、その自由な内容と家族の絆にあります。

それを活用するのは、ネットに書式のあるような単純な契約書では困難です。

繰り返しになりますが、弁護士などの専門家に相談して、自分や家族に合った家族信託計画をたて、それを実行していくのが重要ですし、その場合、ある程度の費用は前提として考えるべきでしょう。

費用を安く抑えることばかり考えるのでは意味がありません。

費用対効果で考えるべきです。

まとめ

家族信託はご自分やご家族で相談してもできます。

しかし、具体化にはさまざまな手続きが必要になります。

法律手続きが必要なので専門家への相談が不可欠になります。

ワンストップでの処理ができる弁護士に相談するのがベストなやり方と言えるでしょう。