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生前贈与の特例を利用して相続税を節税する方法

相続が起こると、基本的には相続税を支払わなければなりません。
相続税には基礎控除が認められますが、基礎控除の金額は近年大きく減額されたので、現在の制度では一般家庭でも相続税支払いの必要性が増しています。

相続税節税の方法としては生前贈与が効果的ですが、生前贈与には贈与税がかからなくなるためのさまざまな特例があるので、それらを賢く利用する必要があります。
そこで今回は、生前贈与に認められる贈与税の特例制度をご紹介します。

1. 生前贈与とは

生前贈与を利用すると相続税を効果的に節税することができますが、その前提として、生前贈与とはどのような制度なのかを確認しておきましょう。

生前贈与とは、贈与者が生きている間にその財産を受贈者(贈与を受ける人)に譲り渡す契約をすることです。

生きている間に財産を贈与してしまうので、死亡時に相続されることがなくなり、相続税が課税されることがありません。

そこで、生前贈与を賢く利用すると相続税を節税できるのです。

ただし、贈与をすると贈与税が課税されますので、贈与契約があった場合、受贈者は贈与税の申告をして贈与税の支払いをする必要があります。

贈与税の税率はかなり高額になるので、やみくもに生前贈与をすると、かえって税金が高くなってしまうおそれがあります。

生前贈与によって賢く相続税を節税するためには、贈与税をかけずに手続きを勧めていく必要があります。

そこで、今回ご紹介する各種の贈与税の特例が役立ちます。

2. 配偶者間の居住用不動産等の贈与の特例

贈与税の特例制度の1つ目として、配偶者間の居住用不動産等の贈与の特例があります。これは、配偶者が居住用の不動産や居住用の不動産の購入資金を贈与する場合に、最高2000万円までの贈与分が無税になる特例です。

この制度を利用する場合、居住用の不動産そのものの贈与だけではなく、居住用不動産の購入資金の贈与の場合でも適用されるので、とても便利です。

さらに、この制度は年間110万円の基礎控除と併用できるので、これと合わせると年間2,110万円までの贈与分を無税にすることができます。

ただし、配偶者間の居住用不動産等の贈与の特例を利用するためには、結婚して20年間以上が経過している夫婦である必要があります。

それに満たない婚姻年数の夫婦ではこの制度を利用できないので注意が必要です。

また、同じ配偶者間では一回しか利用することができないという制限もあります。

配偶者間の居住用不動産等贈与の特例を利用したい場合には、贈与税の申告をする必要があります。

そのとき、以下の書類を添付しなければなりません。

  • ・贈与を受けてから10日が経った後の日付の戸籍謄本または戸籍抄本
  • ・贈与を受けてから10日が経った後の日付の戸籍の附票の写し
  • ・贈与を受けた居住用不動産の登記事項証明書
  • ・贈与を受けた居住用不動産に居住を開始した後の日付の住民票の写し

3. 親(祖父母)から子どもへの不動産購入資金贈与の特例

次にご紹介するのは、親や祖父母から子どもや孫に対して不動産の購入資金を生前贈与する場合の特例です。

この制度を利用すると、購入する不動産の種類によって、一定の金額までの贈与分に対する贈与税が無税になります。

具体的には、以下の表の通りです。

消費税増税前に不動産を購入したケース

不動産を購入した時期

良質な住宅

良質でない住宅

~平成27年12月

1,500万円

1,000万円

平成28年1月~平成29年9月

1,200万円

700万円

平成29年10月~平成30年9月

1,000万円

500万円

平成30年10月~平成31年6月

800万円

300万円

消費税増税後(10%)に不動産を購入したケース

不動産を購入した時期

良質な住宅

良質でない住宅

平成28年10月~平成29年9月

3,000万円

2,500万円

平成29年10月~平成30年9月

1,500万円

1,000万円

平成30年10月~平成31年6月

1,200万円

700万円

この制度を利用するためには、贈与者は受贈者の親や祖父母などの直系尊属である必要があります。

また、贈与を受ける受贈者は20歳以上でなければなりません。

さらに、贈与する財産は、不動産購入資金である必要があります。

不動産そのものを贈与する場合にはこの制度の適用はありませんし、子どもがすでに住宅ローンを組んでいる場合に親がローンを支払ってあげた場合にも、この制度の適用はありません。

このように、相続時精算課税制度などと比べると、適用範囲がかなり狭くなってしまうので注意が必要です。

この制度による非課税の特例を利用するためには、資金の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、管轄の税務署で贈与税の申告をする必要があり、その際非課税の特例の適用を受けることを記載しなければなりません。

また、戸籍謄本や住民票の写し、不動産の登記事項証明書や住宅の新築・取得の際の契約書のコピーなどが必要になります。

4. 親(祖父母)から子どもへの教育資金贈与の特例

次にご紹介するのは、親や祖父母から子どもや孫への教育資金を贈与する場合の贈与税の特例です。この制度を利用すると、教育資金の一括贈与をする場合に、最高1500万円までの贈与分が無税になります。

この制度を利用するためには、贈与をするものは受贈者の親や祖父母などの直系尊属である必要があり、贈与を受ける孫や子どもは30歳以下である必要があります。

資金は一括で贈与する必要があり、分割払いはできません。

教育資金の使い道としては、2通りが考えられます。

1つ目は、主に学校などへの支払いに充てる費用です。

2つ目は、主に習い事や塾代などに支払う費用です。

具体的には以下のように分類されています。

  • 学校等に直接支払う入学金や、授業料など金銭
  • 学校等以外に対し、教育に関して支払う金銭

学校以外のものに支払う金銭とは、たとえばスポーツ施設利用料や文化芸術(ピアノや絵画など)を習うための費用、それらのための物品購入のための費用などです。

学校以外のものに対して支払う費用については、贈与税控除の限度額が500万円となっています。

この制度を利用するためには、まずは信託銀行で受贈者(贈与を受ける子どもや孫)名義の預金口座を作る必要があり、その口座内に贈与者が贈与する教育資金を一括で支払います。

その後、贈与を受けた子どもや孫が学校などに支払いをしたら、その都度信託銀行にその領収証などを提示して払い戻しを受けます。

30歳までに資金を使い切ったらこの制度は終了しますし、30歳になった時点で残高があっても、この制度はやはり終了します。

30歳の時点で残っている資金に対しては、贈与税が課税されます。

5. 親(祖父母)から子どもへの結婚・子育て資金贈与の特例

最後にご紹介するのは、親や祖父母などの直系尊属から子どもや孫に対して結婚・子育て資金を生前贈与する場合の特例です。

この制度を利用すると、最高1000万円までの贈与分に対する贈与税が無税になります。

結婚資金に使う場合には、無税になる限度額は300万円です。

この制度を利用するためには、贈与者は親や祖父母などの直系尊属である必要があり、受贈者は20歳以上50歳未満である必要があります。

教育資金一括贈与の特例と同様、この制度の場合にも、受贈者名義で信託銀行に口座を開き、そこに一括で資金を送金します。

その後、受贈者が結婚や子育てのためにお金を使ったら、その都度領収証を示してお金の払い戻しを受けます。

受贈者が50歳になったら当然にこの制度が終了し、そのときに残った残高があれば贈与税が課税されます。

以上のように、生前贈与をする場合には数々の贈与税の特例がありますので、ケースに応じて賢く利用することにより、相続税を節税しましょう。