遺留分の時効はいつまで?消滅時効と除斥期間について詳しく解説
遺留分親や親族が亡くなった。
人が亡くなるという事だけでも気が動転してしまいますが、その後に必ず出てくるのが遺産相続の問題です。
ましてや遺言書が見つかって、相続手続きがあれよあれよという間に進んでしまった、なんてこともよく聞きます。
気が付くと自分だけ遺産がもらえていない、という事もあるかもしれません。
相続手続きが済んでしまっていたら何もできないのでしょうか?
ここでは、不公平な相続になってしまった場合にはどうしたらよいのか詳しく解説していきます。
目次
1.遺留分とは
夫が亡くなって遺言が見つかりました。
遺言の内容は「遺産をすべて愛人に遺贈させる」となっていました。
このような場合、残された妻や子供は何ももらえないのでしょうか?
そんな事はありません。
法律では最低限の相続財産が保障されており、これは遺言の内容にかかわらず保障されています。
これを「遺留分」と言います。
上記の例の場合、「愛人に遺贈される財産」の中には妻の協力によって夫が作り上げてきた財産もあるかもしれません。
それをすべて愛人にとられてしまっては妻も報われません。
妻等、残された家族の最低限の生活を守るために保障されている権利が「遺留分」なのです。
2.誰に遺留分は保障されている?
上記の場合、愛人に対して「私の最低限の相続分を返してください」と主張することを「遺留分減殺請求」と言います。
この「相続分を返してください。」という権利を「遺留分減殺請求権」と言います。
では誰が愛人に「私の相続分を返してください。」と言えるのでしょうか?
つまり誰に「遺留分減殺請求権」はあるのでしょうか?
遺留分減殺請求が認められているのは、配偶者、子(子が既に死亡している場合はその代襲相続人)と被相続人(死亡した人)の父母です。
ここでのポイントは被相続人の兄弟姉妹には遺留分減殺請求権がない、という事です。
つまり、被相続人の兄弟姉妹は遺言内容が気に入らないと言って遺留分の主張はできないのです。
もし、兄弟姉妹が法定相続人に含まれていて、なおかつその人に財産を相続させたくない場合には遺言を書いて財産を他の相続人に相続させるか、財産をあげたい人に遺贈させる旨を書いておきましょう。
3.いつまで遺留分減殺請求ができる?
遺言が見つかって、いざ内容を確認したら、自分には相続がされない、もしくは不当に低い額の相続分しか与えられていなかったらショックですよね。
しかし、遺言に書いてあるのだから、という理由で何も言わずに遺言の内容を受け入れている人も少なくありません。
後に自分には遺留分があることを知り、その権利を行使したいと思った場合、いつまで遺留分の請求が出来るのでしょうか?
遺留分の請求には時効があるのでしょうか?
ここではいつまで遺留分減殺請求ができるのかについて解説していきます。
(1)遺留分減殺請求の時効
遺留分減殺請求については民法 第1042条にその定めがあります。
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅する。
ここでは、遺留分減殺請求の時効について決められています。
遺留分の減殺請求は、相続の開始、贈与、遺贈があったことを「知った」時から1年間の間にしなくてはならないとされているのです。
贈与とは被相続人が生前に相続人等の誰かに財産を渡す行為を言います。
遺贈とは被相続人が死亡した後に遺言書によって相続人や相続人以外の人に無償で財産を譲ることを言います。
遺留分減殺請求をする場合、自分の遺留分を侵害すると思われる相続、贈与、遺贈があったことを「知った」時から1年の間に行使しなくてはならないのは既に書いた通りです。
では「知った」とは具体的にどのような状態を言うのでしょうか?
相続の場合は、相続の開始を「知った」ときです。
実際には相続の開始から1年以上が経過していたとしても、相続の開始を知らなければ、1年の期間は進行しません。
また遺贈や贈与に関しては、遺贈や贈与があったことを「知った」だけではなく、その遺贈や贈与が自分の遺留分を侵害していることを「知り」なおかつ遺留分減殺請求の対象であることを「知った」時だとされています。
そしてこの時点を起算点として1年間の間に権利を行使しなければならないとされます。
つまり、自分には請求できる権利があることを認識しているにも関わらず、その権利を1年間も使わないのであれば必要ないですね、権利自体がなくなっても文句は言えませんね、という事です。
ただ、この「知った」という概念は曖昧で、そのタイミングを証明するのも難しいのが現状です。
原則として相続が発生してから1年と考えておくのが良いでしょう。
この権利の行使の方法については後述しますが、自分には請求できる権利があることを知ってから1年以内の間に1回でも行使すれば、それ以降については遺留分減殺請求権が時効によって消滅することはありません。
(2)遺留分減殺請求の除斥期間
前掲した民法 第1042条には続きがあります。
相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。
これは遺留分減殺請求権は相続、贈与、遺贈を知ったときから1年間行使しない時には消滅するか、もしくは相続開始から10年経過しても消滅しますよ、ということです。
法律上、これを除斥期間と言います。
相続人が相続の開始、贈与や遺贈があったこと等を知っているか、知っていないかに関わらず、相続の開始から10年を経過してしまったら、遺留分減殺請求権が消滅してしまいます。
この期間を経過してしまうと完全に遺留分の減殺請求が出来なくなってしまいますので、注意が必要です。
このようにせっかく権利があるのに行使せず受け取れるものも受け取れないという事態にならないよう、相続の内容に不満がある場合は一度遺留分減殺請求について詳しい弁護士に相談に行くのが良いでしょう。
4.遺留分減殺請求権はどのように行使する方法
法律上、もらえるべき相続財産があったのにもらえなかった、という事態に遭遇し、自分には遺留分を請求できる権利があることまでは分かったとしましょう。
ところでこの権利、どのように行使すれば良いのでしょうか?
法律上ではこの権利の方法について定められているわけではありません。
言い換えればどのような方法で権利の行使をしても良いのです。
とは言え電話等で話をするだけだと、後々言った、言わないのトラブルになる可能性もゼロではありません。
ここはやはり文書で相手に通知するのが良い方法です。
なぜなら相手に権利を行使した証拠を残すという事は前記のとおり、遺留分減殺請求権の消滅時効の問題もあるため、きちんと権利を行使した、という証拠を残すことが大切なのです。
証拠となる文書という観点で考えると、ここはやはり内容証明郵便で相手に通知するのが良いでしょう。
内容証明郵便で通知すれば、郵便局にも差出人にも相手に送付したものと同様の文書が残ることになります。
郵便局で確定日付も記入してくれます。
念のため、配達証明もつけておきましょう。
配達証明をつければ相手に届いた日付も証明することが出来ます。
これで送った、いや受け取っていないというトラブルも避けることができ、確実に権利を行使した証拠となるでしょう。
配達証明送付後は、相手方と交渉をすることになります。
相手方と交渉して決着が着いたら合意書を作成しておきましょう。
また相手方との交渉がうまくまとまらなかった場合は、調停に進んだり、それでもまとまらない場合には裁判という事になるかもしれません。
そのような時に、内容証明等は証拠となります。
また内容証明は決められた書式で作成する必要があります。
もちろん自分で作成することはできますが、形式が決まっていることや後々の証拠資料となることを考えると、ここはやはり法律のプロである弁護士に依頼するのが得策でしょう。
早い段階から弁護士に相談することにより、相手方との交渉もスムーズに進むかもしれませんし、調停や裁判になった場合も代理人として相手方との対応を依頼することが出来ます。
まとめ
遺留分減殺請求権とは何か、誰がその権利を行使するのか、いつまでに行使しなければならないのか、等ご理解いただけたでしょうか?
普段の生活の中で遺留分減殺請求という言葉をよく耳にする、と言う方は少ないと思います。
そしてとても難しそうな言葉が並んでいて、自分には関係ないと思っている人も多いかもしれません。
ただ一方で自分が持っている権利に気づかず、不当な相続に泣き寝入りしている方も多いのが現状です。
確かに遺留分減殺請求自体にも時効や除斥期間があります。
そして、遺留分減殺請求の結果生じた権利にも、また別の時効が生じてきます。
このように難しい法律の話をされると、もう分からないから黙っていよう、と思う人もいるでしょう。
そんな時にはぜひ遺留分減殺請求に詳しい弁護士に相談してみてください。
まず、自分には遺留分減殺請求権があるのか、そしてその権利を行使できるのか等法律の専門家に話をすることできっと安心感を得ることが出来るでしょう。
遺留分減殺請求は時効や除斥期間があるので、時間を無駄にはできません。
一度遺留分に詳しい弁護士に相談するのが得策です。