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「遺留分侵害額請求権」を分かりやすく説明!対象者の条件・請求時の流れとは?

例えば両親が離婚をし、新たなパートナーと再婚したとします。

そして自分の親が「遺産はすべて妻(もしくは夫)に相続する」と遺言を残し、亡くなったらどう思うでしょうか?

自分は実の子供なのに、相続されるものが全く無いなんて、良い気分がする人は居ないでしょう。

「でも遺言には、全て再婚相手に相続すると書いてあるから、諦めようかな」と思うかもしれませんが、まだ諦めるのは早いです。

遺留分侵害額請求権を行使し、手順を踏みながら行動すれば、自分がもらえるハズだった遺産をもらうことが可能です。

本記事では「遺留分侵害額請求権」について、必要な情報を分かりやすく説明いたしますので、是非チェックしてみて下さい!

そもそも「遺留分侵害額請求権」って何?

「遺留分侵害額請求権」なんて書くと、むずかしい印象を受けるかもしれません。

しかし、一言で表現すればこうです。

自分が被相続人(※)から【もらえるハズだった財産】がもらえない時に、相続を主張できる権利

※被相続人とは?

財産を相続する立場の人で、亡くなった故人のことを指します。

ちなみに相続人とは、被相続人から財産をもらう立場の人のことを指します。

では、この「遺留分侵害額請求権」の仕組みを知る為に、遺留分について詳しく見ていきましょう。

1、遺留分とは?

例えば自分が被相続人の子供だった場合、遺産が相続されると思っていたのに、遺言書に「財産は妻に全て渡す」と書いてあったら困るはずです。

こうしたことを防ぐ為に、法律で最低限保障されている相続分が「遺留分」です。

2、遺留分は、自分から「権利の主張」をする必要がある

遺留分は、黙っていてももらえるのかというと、そうではありません。

自分から権利を主張し、もらう必要があります。

また遺留分請求には時効があり、早い人では被相続人が亡くなって1年で時効を迎えるので、注意が必要です。

時効を迎えると、遺留分を請求することはできなくなりますので、できるだけ早く行動することをオススメします。

ちなみに、遺留分は請求しなくても問題はありません。

遺産は欲しいけれども、相手ともめる方が面倒だと思うのであれば、請求しない選択肢もアリです。

遺留分侵害行為となるのは、どのような行為か?

自分に遺留分をもらう権利があるのに、それを無視した行動を第三者がとった場合「遺留分侵害行為」をされたということになります。

それでは遺留分侵害行為の対象について、主なものを3つご紹介します。

①遺贈

遺言によって、自分が亡くなった後に相続人に財産をあげると示すことを遺贈と言います。

遺贈は被相続人の一方的な意思で成り立つので、相続人に確認をする必要はありません。

例えば父親が子供に対して「私が亡くなった後に、子供に遺産〇〇円をあげる」と遺言に残したとします。

このことを子供が知らなくても、成り立つのが遺贈です。

②死因贈与

先程の「①遺贈」と似ていますが、死因贈与の場合は、相続人もその内容に同意する必要があります。

例えば父親が亡くなる前に、子供に対して「私が亡くなった後に、子供に遺産〇〇円をあげる」とし、子供もそれに対して同意する必要があります。

③生前贈与

  • 遺贈」や「②死因贈与」とは異なり、相続人が生きている間に、被相続人に無償で財産を分けるのが生前贈与です。

相続が発生する前に遺産を分けてしまうので、相続税対策の為に生前贈与を行う人は多いです。

遺留分侵害額請求権を行使できる対象者とは?

「遺留分侵害請求権」は誰でも行使できるかといえば、そうではありません。

当然、その権利がある人でないと行使できません。

1、行使できる人とは?

被相続人に対し、下記にあたる人は「遺留分侵害請求権」を行使できる人です。

■配偶者

■子

■子の代襲相続人

※代襲相続人というのは、本来相続人になるハズだった人が、相続人ではなくなった場合に、その人に変わる者のことを指します。

相続人が亡くなってしまったり、なんらかの理由で相続権を失うことがあります。

例えば、被相続人の子が亡くなってしまった場合、その子供(つまり被相続人から見たら孫)が代襲相続人にあたります。

■直系尊属(父母や祖父母)

2、請求権が無い人とは?

下記の人達は、遺留分侵害額請求権がありそうだと思われがちですが、実は権利を持っておりません。

■兄弟姉妹

■兄弟姉妹の代襲相続人

例えば被相続人には配偶者も子供も直径尊属も存在せず、身内は兄弟姉妹だけだったとします。

このような場合でも、兄弟姉妹及びその代襲相続人には「遺留分侵害額請求権」が発生しません。

各相続人の遺留分の割合について

それでは、気になる遺留分の割合について説明します。

各相続人によって異なりますが、ここに記載されている割合が、権利を主張すれば法律で保障される分になります。

【相続人: 配偶者だけの場合】

配偶者1/2

【相続人: 子だけの場合】

子1/2

※複数の子が存在する場合には、更にここから均等に分割します。

例えば3人の子が存在する場合には、1/2×1/3=1/6となり、1人あたり1/6となります。

【相続人: 直系尊属(祖父母など)だけの場合】

直系尊属1/3

※複数の直系尊属が存在する場合には、更にここから均等に分割します。

【相続人: 兄弟姉妹だけの場合】

なし

【相続人: 配偶者と子の場合】

配偶者1/4

子1/4

※複数の子が存在する場合には、更にここから均等に分割します。

【相続人: 配偶者と直径尊属の場合】

配偶者1/3

直径尊属1/6

※複数の直系尊属が存在する場合には、更にここから均等に分割します。

例えば被相続人が1億円の遺産をもっており、相続人として「配偶者」と「子が2人」いたとします。

その場合の各自の遺留分は下記の通りです。

■配偶者

1億円×1/4=2,500万円

■子

1億円×1/4×1/2=1,250万円

「遺留分侵害額請求権」の請求方法は?流れを解説!

遺留分が侵害された場合、自ら「遺留分侵害額請求権」を主張し、請求する必要があります。

黙っているだけでは、もらうことができないからです。

実は遺留分侵害額請求の方法に、法律で決められたルールはありませんので、口頭で交渉しても構わないわけです。

例えば亡くなった父親が、再婚相手の妻に全て相続してしまったとします。

この時に侵害されてしまった遺留分について、再婚相手の妻に直接口頭で交渉しても良いのです。

もし話ができるようであれば、このように口頭でも良いのですが、実際にはそのようにスムーズに行くケースは少ないでしょう。

その為、基本的には下記のような流れを取ることになります。

  • 1、内容証明を用意し、相手方に送付する

  • 2、1で思うような反応が得られないなら、下記のいずれかの方法を取る

 ・弁護士をたてる

 ・調停を申し込む

 ・弁護士をたてつつ、調停も申し込む

  • 3、話がまとまったら、合意書を交わす

それぞれ下記に詳しく解説します。

1、内容証明を用意し、相手方に送付する

相手に書面を送っても「そんなものは届いていない」と言われたり、内容を改変されてしまったら困ってしまいます。

特に、遺留分侵害額請求に関する大事な書面ならなおさらです。

その為に「誰にどういった内容の書面を送ったか」を証拠として残すことができる、郵便局が実施している「内容証明」を利用することをオススメします。

郵便局で詳細を保管してくれますので、相手が「書面をもらっていない」と言ってきたり、内容を改変されてしまったとしても安心です。

また内容証明の書面を自分で一から作成し、送付することも可能ですが、弁護士などの専門家に依頼すると安心です。

2、弁護士をたてたり、調停を申し立てる

前項の内容証明を送付した後に、相手方に無視されてしまったり、思うような反応が無いこともあります。

その場合には、当事者同士での話し合いは難しいと言えるので、下記のいずれかの方法を取ると良いでしょう。

★弁護士をたてる

★家庭裁判所で調停を申し立てる

★弁護士をたてて、調停も申し立てる

調停を申し立てるだけでしたら、収入印紙代や戸籍謄本代くらいで済みますが、弁護士をたてる場合には着手金や成功報酬などが発生し、それなりに費用がかかってきます。

しかし遺留分の金額が多い場合には、着実に回収することを考えれば、弁護士に依頼する費用も無駄にはならないハズです。

調停は1回で終わることもありますが、話がまとまらない場合には、後日になりますが何回も行うことができます。

もしそれでも話がまとまらなければ、次は訴訟をすることになります。

ちなみに調停を申し立てる先は家庭裁判所でしたが、訴訟の場合には地方裁判所に申し立てることになります。

またお互いが「最初から訴訟で良い」という意見になったとしても、いきなり訴訟を起こすことはできないので、まずは調停を申し立てから始めることになります。

3、合意書を交わす

話がまとまったら、言った言わない問題にならない為にも、きちんと合意書を交わす必要があります。

もちろんこれに関しても自分で作成することは可能ですが、きちんと押さえるべきポイントがありますので、一般の人にはなかなか難しいものがあります。

その為、弁護士などのプロに依頼する方が良いと言えます。

まとめ

今回は、「遺留分侵害額請求権」について、対象者や遺留分の割合をはじめ、請求の方法などの情報を解説いたしました。

遺留分があるのに権利が侵害されており、且つ請求をしたい人は、きちんとポイントを押さえたうえで行動を起こす必要があります。

また、かなり専門的な知識が必要になる場面もありますので、専門家に相談することも視野に入れると良いでしょう。

本記事を参考にし、みなさんが望む結果になることを祈っております。