生前贈与を非課税で行い相続税を劇的に節税する方法
生前贈与所有する財産を親族等に引き継ぐ方法には大きく分けて、生前に行う贈与と死後に行う相続の2つがあります。
政府としては、生前贈与を活発に行うことでの経済効果に期待することもあり、さまざまな有利な政策をおこなっています。
ここでは、そんな生前贈与を贈与税のかからない非課税で行う方法を6つ紹介します。
目次
1.暦年贈与を使った贈与の非課税
(1)暦年贈与とは
まず、暦年贈与を使った贈与の非課税から見ていきましょう。
暦年課税制度とは、親族や第三者など誰に財産をあげてもいい、いわゆる通常の贈与のことです。
年間110万円までの非課税限度額があるので、その金額以内の贈与なら贈与税はかからず、贈与税の申告をする必要もありません。
税金は110万円を超えた部分の金額に対して、その金額に応じて10%から55%までの税金が課せられます。
贈与された金額が高ければ高いほど税率も高くなる仕組みです。
年間110万円までの非課税のため、毎年110万円までの贈与なら、贈与税は一切かかりませんが、例えば毎年100万円の贈与をするというように、定期的にしかも同額を続けて贈与すると、もともと1つの贈与を税金を支払わないために分けて贈与したとみなされかねません。
最初の年に遡って高い贈与税を課せられる恐れがあるので注意が必要です。
(2)そもそも贈与税のかからない資産
他の税金が課せられるものや社会通念上、贈与税を課すべきでないものの贈与にはそもそも贈与税はかかりません。主なものは以下のものになります。
- 墓地や墓石、仏壇、仏具など
- 宗教、慈善、学術などの公益事業に使われる財産
- 心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金の受給権
- 社会通念上必要される金額範囲内の香典、花輪代、祝物や見舞、年末年始の贈答等
- 法人から贈与により取得した資産(所得税になるもの)
など
2.相続時精算課税制度を使った贈与の非課税
(1)相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度とは、簡単にいうと贈与時には贈与税をかけないまたは少ない金額に抑え、相続時に贈与したものも含めた財産全てに相続税をかける制度です。
相続を前提としているため贈与者や受贈者などの一定の要件等があります。
(2)相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度には要件等のさまざまなきまりがあります。具体的に見ていきましょう。
①贈与者と受贈者
贈与者と受贈者には制限などがあります。
60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子供または孫への贈与に限られます。
また、第三者への受贈にはこの制度を利用できません。
②制度の選択
財産を受け取った子や孫が、祖父や祖母など財産を贈与する人ごとに相続時精算課税制度を選択するのか、そのまま暦年贈与にするのかを選択します。
③非課税限度額と税率
相続時精算課税は相続があるまでに合計で2,500万円までが非課税です。
年間2,500万円ではないので注意が必要となります。
また、合計2,500万円を超えた部分に対し、税率は一律20%です。
④申告
贈与税がかからなくても、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に「贈与税の申告書」「相続時精算課税選択届出書」に添付書類をつけて所轄税務署へ提出します。
3.住宅取得等資金贈与による贈与の非課税
(1)住宅取得等資金贈与による非課税制度とは
住宅取得等資金贈与による非課税制度とは、住宅を取得するための資金の援助で一定の条件をクリアしている場合に、一定の金額について贈与税が非課税になる制度です。
(2)制度を受けるための主要件
この制度には多くの要件があります。
その中の主なものを列挙しました。
①贈与者と受贈者
父母や祖父母などの直系尊属から(受贈者の年齢制限なし)贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の子や孫への贈与に限られます。
ただし、贈与を受ける者のその年の所得が2,000万円以下である場合に限ります。
②家屋の条件
- 日本国内にあり、登記簿上の床面積が50㎡以上240㎡以下であること
- 中古住宅の場合は以下のものに限定
耐火建築物の場合は築後25年以内
耐火建築物の場合は築後20年以内
- 増改築等の場合は次の2つの条件をどちらも満たしていること
一定の基準であることが、増改築等工事証明書などで証明されていること
工事に要した費用が100万円以上であること
④非課税制度
贈与を受けた年や取得した住宅の種類によって、非課税限度額が異なる
A)B 以外の場合
契約の締結日 |
省エネ等住宅 |
左記以外の住宅 |
平成32年 3月31日まで |
1,200万円 |
700万円 |
平成32年 4月 1日から 平成33年 3月31日まで |
1,000万円 |
500万円 |
平成33年 4月 1日から 平成33年12月31日まで |
800万円 |
300万円 |
B)住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%の場合
契約の締結日 |
省エネ等住宅 |
左記以外の住宅 |
平成32年 3月31日まで |
3,000万円 |
2,500万円 |
平成32年 4月 1日から 平成33年 3月31日まで |
1,500万円 |
1,000万円 |
平成33年 4月 1日から 平成33年12月31日まで |
1,200万円 |
700万円 |
4.教育資金の贈与による贈与の非課税
(1)教育資金の贈与による非課税制度とは
教育資金の贈与による非課税制度とは、平成31年3月31日までに、一定の年齢の子供や孫に教育のための資金を贈与した場合は、一定金額が非課税になる制度です。
(2)制度を受けるための要件
①贈与者と受贈者
父母や祖父母などの直系尊属から(受贈者の年齢制限なし)30歳未満の子や孫への贈与に限られます。
②信託
あらかじめ資金を一括で金融機関や信託会社、金融商品取引業者に信託(預入)等をする必要があります。
また、信託した金融機関等を経由して、必要事項が記載された教育資金非課税申告書を税務署に提出する必要があります。
③非課税限度額
この非課税制度は、実際に資金を払い出し教育目的に使うときに贈与がおこなわれたと考えるのではなく、金融機関等に資金を信託した時に贈与が行われたと考えます。
ただし、使い道により贈与税の非課税限度額が以下のように異なります。
学校等に払う入学金や授業料…合計1,500万円まで
学校以外の塾などに支払う授業料…合計500万円まで
(3)信託終了時の処理
次の場合に信託が終了します。
- 受贈者が30歳に達したとき
- 受贈者が死亡したとき
- 信託していた資金が0円になったとき
②の受贈者が死亡したときや、③の信託していた資金が0円になったときはそれ以上、税金の問題はありません。
①の受贈者が30歳になったとき、信託していた教育資金に残高がある場合は、教育目的に使っていなかったことになるので、あらためてその金額に対し贈与税がかかります。
5.結婚や子育てのための贈与の非課税
(1)結婚や子育てのための贈与による非課税制度とは
結婚や子育てのための贈与による非課税制度とは、子供や孫の結婚や子育てのために資金を贈与した場合は、一定金額が非課税になる制度です。
(2)制度を受けるための要件
①贈与者と受贈者
父母や祖父母などの直系尊属から(受贈者の年齢制限なし)20歳以上50歳未満の子や孫への贈与に限られます。
②信託
あらかじめ資金を一括で金融機関や信託会社、金融商品取引業者に信託(預入)等をする必要があります。
また、信託した金融機関等を経由して、必要事項が記載された結婚・子育て資金非課税申告書を税務署に提出する必要があります。
③非課税限度額
この非課税制度は、実際に資金を払い出し結婚・子育て目的に使うときに贈与がおこなわれたと考えるのではなく、金融機関等に資金を信託した時に贈与が行われたと考えます。
ただし、使い道により贈与税の非課税限度額が以下のように異なります。
妊娠・出産及び育児等の費用…合計1,000万円まで
挙式費用などの結婚の費用…合計300万円まで
(3)信託終了時の処理
次の場合に信託が終了します。
- 受贈者が50歳に達したとき
- 受贈者が死亡したとき
- 信託していた資金が0円になったとき
②の受贈者が死亡したときや、③の信託していた資金が0円になったときはそれ以上、税金の問題はありません。
①の受贈者が50歳になったとき、信託していた結婚・子育て資金に残高がある場合は、結婚・子育て目的に使っていなかことになるので、あらためてその金額に対し贈与税がかかります。
6.贈与税の配偶者控除を使っての贈与の非課税
(1)贈与税の配偶者控除を使っての非課税制度とは
贈与税の配偶者控除を使っての非課税制度とは、配偶者から居住用の不動産や居住用の不動産を購入する資金を贈与された場合に、一定金額が非課税となる制度です。
(2)制度を受けるための要件
①結婚期間
長年一緒に生活を築き上げた配偶者に対する優遇制度のため、結婚期間が20年以上の夫婦に限られます。
②贈与される財産の条件
以下のどちらかである必要があります。
- 居住用の不動産
- 居住用の不動産を取得するための資金
③居住要件
次の要件を満たす必要があります。
- 翌年3月15日までにその住宅に居住すること
- その後も引き続き居住する見込みであること
④非課税限度額
2,000万円まで。
ただし、今までにこの制度を利用したことがある場合は、再度の利用はできません。
(同一夫婦間での利用は、1度だけ)
⑤申告要件
この制度は配偶者控除といい、長年一緒に生活を築き上げた配偶者に対する優遇制度です。
配偶者控除という位置づけのため、この制度を利用するためには、贈与税がかからなくても、所轄税務署に、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしなければなりません。
申告を忘れると配偶者控除が使えず、贈与税を納める必要がでてくるため、注意が必要です。
まとめ
生前贈与の非課税制度は、原則目的にあった贈与であれば贈与税を課さないというものです。
そのため、利用できる制度があれば絶対に利用したいものです。
ただし、それぞれの非課税特例には、さまざまな適用要件があったり、手続きが複雑であったりします。
生前贈与を考えていて不明点・不安な点などがある場合は、できるだけ早めに弁護士などの専門家へ相談しましょう。