ビットコイン等の仮想通貨の相続方法と相続税の考え方について解説
相続税 / 贈与税ネットやニュースなどで最近よく耳にするネット上の仮想通貨「ビットコイン」。
取引量の増加などに伴い、ビットコインについての法体制が整いつつあります。
税法についても、まずは所得税でどう取り扱うかの指針が公表されました。
その内容は、ビットコインは物品などを購入するために使う支払い手段ですが、ビットコイン自体を使って得た利益は、原則「雑所得」になるというものです。
※事業をしている場合で、事業のためにビットコインを使う場合の利益は「事業所得」になると考えられます。
参考:ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係|所得税|国税庁
では、相続税や相続方法についてはどのようになるのでしょうか。
今回は、相続があまりわからない人にも問題なく理解してもらうため、まずは遺産相続についての基礎的なことを述べます。
それを踏まえ、被相続人がビットコイン等の仮想通貨を所有していた場合に相続税の対象になるのか解説します。
目次
1.相続人とは
まずは遺産を相続する法定相続人についてみていきましょう。
民法で定められている相続人とは、配偶者と血族(血縁)です。
配偶者は、つねに相続人になります。
血族(血縁)とは子供や孫、父母や祖父母といった直系の親族と、兄弟姉妹およびその子のことです。
相続人の中で配偶者が必ず相続順位第1順位となり、それ以外の血族(血縁)の中で順位付けをしていきます。
配偶者がいる場合は、配偶者+血族(血縁)の順位の高い人が相続人になります。
以下、それぞれの相続人について見ていきましょう。
(1)第1順位
相続順位の第1順位は配偶者と被相続人の子です。
①配偶者
被相続人の配偶者は、被相続人とともに財産を築いたということで、相続順位は1位です。
ただし、婚姻届を出していない内縁関係の人は含まれません。
②子
実子、養子に関係なく被相続人の子供も順位は1位です。
配偶者は婚姻届を出した人しか相続人になれませんでしたが、子の場合は法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた嫡出子だけでなく、非嫡出子も同等に扱われます。
また、相続開始時点では配偶者のお腹にいて、その後生まれた子どもも含まれます。
③子の代襲者
相続人となる子が相続開始時に死亡しているなどの理由で相続権を失っているときは、子の代襲者が第1順位とみなされます。子の代襲者とは、孫やひ孫のことです。
(2)第2順位
被相続人の父母や祖父母は相続順位第2位で、第1順位で血族(血縁)の子や子の代襲者がいないときに相続人になります。
父母と祖父母では父母が優先され、父と母の間に優先順位はありません。
また、実父母だけでなく、養父母にも相続権はあり、実・養も平等です。
父母がいない場合は祖父母に遡って相続権が発生し、この場合も父方、母方とも平等に相続権があります。
(3)第3順位
①兄弟姉妹
血族(血縁)の第1順位や第2順位の相続人がいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
同じ両親のもとに生まれた兄弟姉妹であっても、片方の親のみが同じ兄弟姉妹であっても区別はなく、平等です。
②兄弟姉妹の代襲者
兄弟姉妹に相続権がある状態で、相続開始時に彼らが死亡しているなどの場合、兄弟姉妹の子が相続権を引き継ぎます。
ただし、兄弟姉妹の孫は代襲者になることはできません。
(4)相続人がいないとき
配偶者や第3順位までの相続人がいない場合は、遺産は相続財産法人に管理され、特別縁故者もいない場合は最終的に国庫へ引き継がれます。
2.相続税の基本的な考え方
まずは相続税の仕組みから確認していきましょう。
相続税とは、人が亡くなったときにその所有していた財産に課される税金のことです。
ただし、相続税には亡くなった方に対して、誰でも無条件で受けられる控除の基礎控除があります。
だれでも控除を受けることができるので、基礎控除額より少ない財産を引き継いだ場合は相続税がかかりません。
この基礎控除の金額は、法定相続人の数で変わります(法定相続人については、あとで解説します)
具体的には、以下の計算式にあてはめて求めます。
【基礎控除の計算式】
3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、法定相続人が配偶者1人と子供2人だった場合の基礎控除の額は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。
つまり4,800万円を超える財産があれば、相続税を支払う必要が出てくるのです。
4,800万円といえば、例えば、持ち家の土地や建物の評価額が3,000万円、有価証券や、預貯金などの財産が他に1,800万円程度あれば到達する額です。
サラリーマンの家庭で相続税がかかるケースが出てきても、おかしくない数字です。
自分の持っている財産がどれぐらいの価値があるかは、常に把握しておく必要があります。
亡くなった方が、先の計算式で計算した基礎控除以上の価値の財産を持っている場合は、相続税の申告や納税をする必要があります。
基礎控除より財産が少ない場合は申告する必要はありません。
相続税の申告や納付は、亡くなった日(相続開始の日)の翌日から10か月以内に行う必要があるので注意が必要です。
では相続税の計算の大まかな流れを見ていきましょう。
(1)基礎控除額を求める
まずは、相続税の申告をする必要があるかどうかの判定も含めて、基礎控除額を計算します。
(2)財産を評価する
次に、被相続人の財産にどれぐらい価値があるのか評価します。
現金や預金などは、おおよそその残高が価値になるので問題ありませんが、不動産や有価証券などは、財産の価値を計算して求める必要があります。
小規模宅地等の特例といった納税者に有利になる特例も必ず利用しましょう。
(3)税額を計算する
基礎控除額より評価した財産の価値が高い場合は相続税を支払うことになりますが、葬式費用や借入金などは財産の価値から差し引くことができます。
残りの金額に税率をかけた金額が相続税額となります。
※実際はもう少し計算の仕組みが複雑です。
参考:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4152.htm
3.ビットコイン等の仮想通貨の資産価値としての考え方
ここまでは、相続税の基本について確認してきました。
ここからは、いよいよ本題のビットコイン等の仮想通貨(以下、便宜上ビットコインと表現します)の考え方について見ていきましょう。
上述した通り、相続税とは、亡くなった人がその時点で持っている資産に対して課される税金です。
では、ビットコインの資産価値をどのように考えるのでしょうか。
金融庁では、ビットコインは貨幣機能を持つという認識を示しています。
貨幣機能を持つ資産には、現金や預金、電子マネーなどが挙げられます。
現金や預金の資産価値はその時点における価値つまり時価です。
これは電子マネーも同じです。
残高といったほうが分かりやすいかもしれません。
時価といっても日本国で日本通貨を使っている限りは、今日手元にある100円の現金が明日110円になるわけではないので、現金や預金、電子マネーの資産価値は簡単に把握できます。
では、ビットコインはどうでしょうか。
ビットコインの資産価値を考える場合、2つの問題点があります。
1つが日本円でないことです。1ビット=1円ではないので、換算をしなければいけません。
もう1つは相場が変動していることです。
例えば、今日手元にある換算後100円のビットコインが、明日110円になることは十分あります。
この2つの問題点を解決するためには、法律でどのようにビットコインを評価するかを定める必要がありますが、今のところ相続税に関してはその評価方法が決まっていません。
4.ビットコインの相続方法
では、被相続人が持っているビットコインは、どのように相続人に引き継がれるのでしょうか。
相続方法を知るには、ビットコインがどのように入手されているかを知る必要があります。
ビットコインには「取引所で購入」「他の人からの送金」「マイニング」の3つの入手方法がありますが、一般的には「取引所で購入」の場合が多いです。
この場合は、FXのように自分の口座から取引所の口座に資金を移動させる必要があるため、銀行口座の記録に送信履歴が残ります。
「他の人からの送金」は、モノやサービスを提供したことの対価として受け取る場合がほとんどのため、事業等をしていない限りはこの方法で入手することは少ないでしょう。
「マイニング」は専用のコンピューターに計算させてビットコインを入手する方法です。数百万円の投資が必要な場合も多いため、個人で行うことは少ないです。
一般的には、「取引所で購入」の場合が多いため、生前に被相続人からビットコイン取引をしていることを聞いているか、銀行口座の送信履歴により、被相続人がビットコインを所有していることを知ることになるケースが多いです。
被相続人がビットコインを所有していることが分かれば、相続人はどこにそのビットコインが保管されているかを、調べる必要があります。
ビットコインはウォレットという財布のようなものに保管されています。
このウォレットはさまざまな形式のものが存在しています。
一般的には、パソコン上に置いているデスクトップウォレット、Web上のウェブウォレット、スマートフォン上のモバイルウォレット、ハードウェアウォレット(専用端末)のいずれかを使っていることが多いので、被相続人のパソコンやスマートフォンを調べることになります。
多額のビットコインを所有している場合は、アドレスと秘密鍵を印刷して保管するペーパーウォレットの場合もあります。
この場合は被相続人の机や家具、貸金庫などに保管されている場合もあります。
どの形態であれ、ビットコインを相続する場合、相続人はビットコインを探すことから始める必要があります。
5.ビットコイン相続時の注意点
上述したとおり、ビットコインはウォレットに保管されています。
ウォレットに入るためには、そのウォレットのアドレスや秘密鍵(パスワード)が必要です。
そのためウォレットのアドレスや秘密鍵(パスワード)が分からないと、残高があるのに使えない状況になります。
ビットコインに対する相続税の方針が示されてはいませんが、相続税は原則、被相続人の死亡時点に持っていた財産に課されるため、ビットコインに相続税はかかるが使用できない状況にならないとも限りません。
そもそも、残高自体わからない可能性もあります。
ビットコインを所有している場合は相続のことを考え、家族等にウォレットのアドレスや秘密鍵(パスワード)が分かるように管理しておく必要が出てくると考えられます。
6.ビットコインに相続税はかかるのか?
ビットコインに相続税がかかるかどうかは、まだ議論がされている最中です。
しかし、金融庁ではビットコインは貨幣機能を持つという認識を示していることや、ビットコインを使用することで生じた利益については「雑所得」になることが公表されたことなどを考えると、ビットコインに相続税がかかる可能性が高いでしょう。
そのためビットコインも他の相続財産と同じように、相続対策を講じておく必要があります。
7.ビットコイン以外の財産で相続財産になるものとならないもの
では、ビットコイン以外の財産では、どのようなものが相続財産になり、どのようなものが相続財産にならないのでしょうか。
(1)相続財産になるもの
相続税の対象になる財産には、被相続人から直接引き継ぐことのできる財産(これを本来の相続財産といいます)と、被相続人から直接引き継ぐことはできないが、引き継いだとみなす財産(これをみなし相続財産といいます)の2種類があります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
①本来の相続財産
被相続人が亡くなった日に、実際に所有していた財産のことです。
具体的には、現金や普通・当座・定期預金(相続日までの預金などの利息も含む)、有価証券、土地・家屋(登記されていないものも含む)、骨とう品や貴金属などが相当します。
また、事業をしている場合は、経営している会社の株式や会社に対する貸付金、事業で使っていた財産(機械、商品、売掛品、未収入金など)も財産になります。
②みなし相続財産
被相続人が亡くなった日に実際に所有していた財産ではないが、所有していたとみなす財産のことです。
生命保険や退職金・慶弔金などが相当します。
ただし、これらには非課税枠があり、枠を超えた部分が相続税の課税対象となります。
生命保険に関しては、被相続人以外が契約者であっても、被相続人が掛け金を支払っていた場合は相続税の課税資産になる可能性があるので、注意しましょう。
また、遺言などで相続人が被相続人から土地などを低額譲受(本来の時価よりも著しく低い価格で譲り受けること)してもらった場合は時価と売買価格の差額に対して、債務免除をしてもらった場合はその金額に対して、相続税がかかることがあります。
③被相続人から生前贈与された財産
被相続人から生前贈与された次の財産は、相続税の課税対象になります。
- 相続時精算課税制度を使って贈与を受けた財産
- 相続時精算課税制度を使わない通常の贈与で、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産
(2)相続財産にならないもの
財産の中には政府の政策や社会通念上、相続税をかけるべきではないとして非課税になっている財産もあります。
具体的には以下のようなものがあります。
- 墓地、墓石など祖先崇敬の対象となるもの
- 宗教、慈善、学術など公益事業で使うことが明らかとなっている財産
- 心身障害者共済制度に基づく給付金や受給する権利
- 生命保険金や退職金で、500万×法定相続人数の金額までの部分
- 相続税の申告期限までに、国、地方公共団体などに寄附した財産
- 個人経営の幼稚園の財産で一定の要件を満たしているもの
現在、定められている相続財産になるものとならないものを確認しても、ビットコインが相続財産になる可能性は高いと思われます。
8.ビットコインに相続税がかかる場合の節税方法
ここからは、ビットコインに相続税がかかる場合にどのような節税方法があるかを考えていきます。
ビットコインをどのように財産評価するのかが現在まだ決まっていないため、確実な節税方法は今後の法整備の行方を見てからということになりますが、相続税の節税として考えられるのが、生前贈与です。
財産を家族などに引き継ぐ方法には生前の贈与と死後の相続がありますが、生前の贈与をうまく使うことで相続税の節税をすることができます。
生前贈与には2つの制度があります。
(1)暦年課税制度
1つ目の制度は暦年課税制度です。
暦年課税制度とは、毎年110万円の非課税枠がある贈与です。
年間の贈与が110万円以下の場合は贈与税がかからず、その場合は贈与税の申告も不要のため手間もかかりません。
110万円までのビットコインがある場合は、生前に贈与すれば相続税の節税になります。
(2)相続時精算課税制度
もう1つの制度が、相続時精算課税制度です。
相続時精算課税制度とは、財産を生前に贈与されたときには税金をかけずに、後の相続時に生前贈与分を含めたすべての財産に相続税をかける制度です。
相続時は多くの財産を引き継ぐので、その中から納税資金の用意をすることができます。しかし贈与時は、贈与されたものの中から納税資金を用意することは難しいことが多いです。
これでは生前贈与がしにくいということから、税金の支払いをいわば相続時まで先延ばしすることができる相続時精算課税制度が考え出されました。
しかしこれだけ聞くと、相続時に生前贈与分を含めたすべての財産に相続税をかけるのであれば節税にならないと思う人も多いのではないでしょうか。
実は、相続時精算課税制度を利用しても、相続税の節税になる場合とならない場合があります。
では、相続税の節税になる場合はどのような場合か見ていきましょう。
(3)ビットコインで相続時精算課税制度を利用して、相続税の節税になる場合
ビットコインで相続時精算課税制度を利用して、相続税の節税になる場合は、ビットコインの価値が上昇しそうな場合です。
ビットコインのように、つねに価値が変動しているものは、どの時点の価値に税金がかかるのかが問題になります。
基本は贈与なら贈与したとき、相続なら相続したときの価値に税金がかかります。
例えば、今のビットコインの価値が200万円、相続時のビットコインの価値が250万円に上昇していたとします。
今ビットコインを贈与すれば、200万円に対して税金がかかります。
ビットコインを相続時まで所有していれば、相続時の価値の250万円に対して税金がかかります。
ところが、相続時精算課税の場合はその後の相続時に財産に含めるときも「贈与時の価値」である200万円で税金の計算をすることができる制度です。
そのため、価値が上がりそうな資産は前もって贈与をしておき、相続が発生してから相続時精算課税制度を利用すると節税につながります。
(4)相続時精算課税制度の詳細
では、相続時精算課税制度について少し詳しく見ていきましょう。
相続時精算課税制度を利用するにあたっては、贈与する相手や金額などに条件があります。
①適用対象者
相続時精算課税制度では、財産を贈与する贈与者や贈与される受贈者に適用要件があります。
贈与者…贈与した年の1月1日で60歳以上の父母または祖父母
受贈者…贈与を受けた年の1月1日で20歳以上の子供(相続時に相続人と推定される人に限る)または孫(ただし、相続時の相続税が高くなるので注意が必要)
②対象資産
贈与する財産の種類に制限はありません。
今のところビットコインも対象になると考えられます。
③非課税限度額
相続時精算課税制度は、そもそも贈与時に税金をかからなくするために考えられた制度ですが、それでも大きい金額の贈与の場合は税金がかかります。
目安は2,500万円です。
贈与財産の合計が2,500万円までは非課税ですが、2,500万円を超える分は一律20%の税金がかかります。
相続時精算課税制度の非課税枠は、暦年課税制度のように1年間につき設定されているものではなく、相続があるまでに行われた贈与の合計金額で計算します。
例えば、1年目に贈与2,000万円、2年目に贈与1,000万円があった場合、1年目の税金は0円、2年目は1,000万円-(非課税限度額2,500万円-1年目の贈与額2,000万円)=500万円に20%の税金がかかり、100万円の贈与税を納付します。
④手続き
相続時精算課税制度は、贈与を受けた人がその制度を利用するかどうか決定します。
また、ビットコインの贈与ではあまりないかもしれませんが、贈与者ごとに制度を利用するかどうか選択できます。
例えば、父からの贈与は相続時精算課税制度、母からの贈与は暦年贈与制度というように決めることが可能です。
しかし、贈与を受けた人がどのような制度を利用したか、税務署は把握できません。
そこで、利用した旨を届ける必要があります。
贈与を受けているので、税金の支払いがなくても贈与税の申告をする必要があります。
⑤申告期間
贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に申告します。
提出書類…贈与税の申告書、相続時精算課税選択届出書
必要書類…受贈者の戸籍謄本、受贈者の戸籍の附票、贈与者の住民票など(受贈者の状況で異なる)
9.ビットコインに相続税がかかる場合には専門家に相談すべき?
ビットコインは、まだまだ法律等の整備がこれからの部分がありますが、他の財産と同じように相続税の対象となる可能性が高いです。
そのため、事前の節税対策をきちんとしておかないと、思わぬ金額の税金を支払うことになりかねません。
また、秘密鍵やアカウント、パスワードの管理や相続人への引き継ぎ方法なども検討しておく必要があります。
状況によって遺言書などに記載しておく必要もあるでしょう。
評価方法など今後規定される法律に対応する必要も出てきます。
少なくともビットコインを含む相続の申告数が多くなり、事例が一般化するまでは、弁護士などの専門化に相談した方がよいでしょう。
10.ビットコインと株や為替との違い
ビットコインは現金や預金と違い相場のあるものです。
相場のあるものの代表的なものとして株や為替が挙げられます。
では、ビットコインと株や為替にはどのような違いがあるのでしょうか。
そこには狭い意味での貨幣と(金融)商品の違いがあります。
株や為替は、それを購入し運用することで利益を得る「(金融)商品」の意味合いが強いです。
現金や預金は、それを購入し運用するというよりも、何かを購入するための支払手段である「貨幣」になります。
ビットコインではどちらになるか意見が分かれていましたが、金融庁がビットコインは貨幣機能を持つという認識を示してからは、貨幣として考える意見の方が強くなってきています。
しかし、こと財産評価に限っていうと「現金や預金よりも株や為替に近いのではないか」という意見の方が強いです。
ただ、その評価方法は公表されていません。
また、株と為替では評価方法も異なりますが、ビットコインをどのような評価をするのかは、今後の動向に注視する必要があるでしょう。
では、ビットコインの評価方法を考えるためにも、株や為替の評価方法を確認しておきましょう。
(1)株式の評価方法
株式の評価方法は、その株が上場株式等なのか取引相場のない株式なのかで評価方法が異なります。
①上場株式等の評価
上場株式等は取引所などで取引が行われているため、その金額を用いて評価します。
- 相続開始日の終値
- 相続が開始された月以前3か月間の毎日の終値の各月ごとの平均値
上記の2つを比べ、低い方が上場株式等の評価額となります。
②取引相場のない株式
取引相場のない株式の評価は、取引所などで取引が行われているわけではありません。
そのため、会社の規模や業種、持株の状況や純資産価値などから計算する必要があります。
これを株式評価方式といいます。株式評価方式は、その会社を規模等で大会社、中会社、小会社の3つに分けそれぞれで異なる評価を行います。
- 大会社
評価する株式を発行している会社と類似規模、類似業種の会社の1株当たりの配当金額や税引前当期純利益、純資産合計を使って計算する類似業種比準価額で評価します。(純資産価額を上限)
- 小会社
純資産価額を評価額とします。
純資産価額とは、簡単に言うと会社が持っている不動産などのすべての資産や負債を相続評価し、評価替えした総資産から総負債を差し引いて求めた金額です。
※実際には少し複雑な計算をします。
- 中会社
中会社は大会社と小会社の間の規模の会社のため、大会社の評価で使う類似業種比準価額と小会社の評価で使う純資産価額を併用して、株式の評価をします。
(2)為替の評価方法
為替などの外貨建ての資産を相続財産に持っている場合は、それを日本円に換算する必要があります。
この円換算には、どの時点の、どの為替レート、を使って換算するのかが重要になってきます。順に見ていきましょう。
①どの時点の為替レートを使うか
これは相続開始日の為替レートを使います。
②どの為替レートを使うか
これは原則、納税者が取引をしている金融機関が公表する対顧客直物電信買相場(TTB)を用いて円換算します。
対顧客直物電信買相場(TTB)とは、金融機関に外貨を円に交換するときに用いる相場のことです。
上記の評価方法を見れば、いかに細かく株式や為替の評価方法が決められいるかがわかると思います。
ビットコインが相続財産になるためには、株や為替のような細かい評価方法を決める必要があります。
今後決められる評価方法によっては、ビットコインの評価が複雑なものになる可能性もあるので注意しましょう。
11.今後考えられる流れ
では、今後ビットコインについて、どのようなことが考えられるかを見ていきましょう。
所得税では、ビットコインを使用することで利益が生じた場合、雑所得として課税することが公表されました。
このように、ビットコインの課税関係については今後次々と公表されていく可能性が高いでしょう。
相続税や贈与税に関して課税関係が公表される場合は、ビットコインをどのように財産評価するのか、またその方法について公表される可能性が高いです。
また、そもそもビットコインが保管されているウォレットに相続人が入ることができなければ、残高等を知ることができないため、秘密鍵やアカウント、パスワードの管理方法をどうするかについても一定の方向性が示される可能性が高いでしょう。
まとめ
見てきた通り、ビットコインを使うことで生じた利益は、他の財産と同じように相続税の対象となる可能性が高いです。
まだまだ法律等は整備の途中であり、これから決めていかなければならない部分がたくさんありますが、相続財産になる以上、節税のためには事前の対策をきちんと進めておきたいところです。
秘密鍵やアカウント、パスワードの管理方法をどうするかについても、今後一定の方向性が示される可能性が高いですが、その情報を独力で即座に入手するのは難しいと思われます。
そのためビットコインを財産に持つ場合は、できるだけ早い時期に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
※平成29年9月時点での調査情報を基に記載しています。