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特別受益の財産評価と持ち戻し計算の方法をわかりやすく解説

法定相続人の中に、遺贈や生前贈与によって特別に利益を受けた人がいた場合、その受益分を無視して単純に法定相続分に応じて遺産分割をすると、相続人ら間で不公平な結果になってしまうおそれが高いです。

そこで、法律は特別受益という考え方によって、法定相続人間の公平をはかっています。
特別受益が認められる場合、受益財産をどのようにして評価すべきかが問題になりますし、また、具体的にどのようにして持ち戻し計算をするのかも知っておく必要があります。

そこで今回は、特別受益の財産評価方法と持ち戻し計算方法、主張する方法などについて解説します。

1. 特別受益の財産評価方法

特別受益とは、法定相続人の中に、被相続人から特別に利益を受けた人がいた場合のその受益のことです。

たとえば、被相続人の長女が、被相続人から居住用の不動産の生前贈与を受けたいた場合などに特別受益が成立します。

特別受益が認められるのは、法定相続人のみであり、被相続人が法定相続人に遺贈をしたり生前贈与をしたりした場合に成立します。

ただ、生前贈与をした場合、生前贈与時と相続開始時とで、財産の評価が変わっていることがあります。

たとえば不動産などの場合、現在の時価と贈与時の価格が全く異なる事なども多いです。

そこで、特別受益を考えるとき、いつの時点で財産評価をすべきかが大きな問題になります。

特別受益の財産評価は、原則として相続開始時の時点での評価になります。

たとえば、30年前に被相続人が相続人に対して土地を生前贈与していた場合、その土地の評価は30年前の贈与時の評価ではなく現在の評価額をもって評価します。

ただ、このことは不動産などの場合には比較的簡単ですが、現金や預貯金などの場合には問題があります。

現金や預貯金は、過去でも現在でも評価額自体に変更はありません。

たとえば、50年前に30万円を生前贈与した場合、相続開始時でも「30万円」であることに変わりはないはずです。

しかし、物価や給料の上昇があったため、貨幣価値自体は、50年前と現在とでは大きく異なります。

そこで、過去に現金や預貯金などが生前贈与された場合には、過去の贈与金額を、現在の貨幣価値に置き換えて評価替えすることが普通です。

たとえば過去に30万円の生前贈与受けた場合、それを現在の価値に置き換えると150万円の価値があったとみなされると、特別受益の評価額としては、150万円になる可能性があります。

2. 特別受益の持ち戻し計算の方法

次に、具体的な特別受益の持ち戻し計算の方法をご説明します。

特定の法定相続人に特別受益を受けた受益者がいる場合には、特別受益の持ち戻し計算をしないといけません。

特別受益の持ち戻し計算をする場合には、遺産の総額に、受益分の財産を足します。

この、遺産+受益分の合計額のことをみなし相続財産と言います。

そして、みなし相続財産を法定相続分に応じて相続人らが分配することになります。

このとき、受益者の取得分は、特別受益の分差し引かれます。

わかりやすいように、具体例を見てみましょう。

被相続人に配偶者と子ども3人(長男、長女、次男)がいるケースで、遺産の総額が5000万円の場合を考えてみましょう。

このとき、長女が婚姻するときに1000万円の持参金を生前贈与されていたとします。

すると、まずは、長女の特別受益分1000万円を持ち戻し計算しないといけないので、みなし相続財産は

5000万円+1000万円=6000万円となります。

そして、この5000万円のみなし相続財産を、法定相続分に応じて分配します。

法定相続分は、配偶者が2分の1、子ども達3人がそれぞれ2分の1×3分の1=6分の1ずつとなります。

そこで、配偶者の相続分は、6000万円×2分の1=3000万円

長男の相続分は6000万円×6分の1=1000万円

長女の相続分は、6000万円×6分の1-1000万円=0円

次男の相続分は、6000万円×6分の1=1000万円となります。

以上のように、特別受益の持ち戻し計算を行うと、長女の受益分が正当に評価されて、それぞれ公平になるように遺産相続ができていることがわかります。

3. 特別受益持ち戻しの免除とは

特別受益がある場合、持ち戻し計算によって各法定相続人間の公平をはかることができますが、特別受益に該当するような生前贈与や遺贈があっても、必ず特別受益の持ち戻し計算をしなければならないというわけではありません。

特別受益の持ち戻し免除は、各法定相続人間の公平をはかるための制度です。

そこで、他の法定相続人が全員納得していれば、あえて特別受益の持ち戻し計算をする必用はありません。

たとえば、遺産分割協議の際に誰も特別受益の主張をしなかったり、いったんは遺産分割協議の席で特別受益の主張が出たけれども結果的には特別受益の持ち戻し計算をしないことに全員が納得したりした場合などには、特別受益があっても持ち戻し計算なしに遺産分割が行われます。

また、特別受益の持ち戻しは、被相続人がこれを免除することもできます。

被相続人が特別受益の免除をすると、他の相続人らが望んでも、特別受益の持ち戻し計算をすることはできなくなります。

特別受益の持ち戻しの免除の方法については、法律は特に定めていないので、自由な方式ですることができます。

たとえば、口頭で「特別受益の持ち戻しを免除する」などと言っても一応有効です。

しかし、実際には口頭で免除を受けたと言っても他の相続人が納得しないことが普通です。

たとえば、被相続人から1000万円の生前贈与を受けた長女がいる場合に、死後遺産分割をする際「お父さんから『特別受益の持ち戻しを免除する』と言われた」などと言っても、他の相続人は聞く耳を持たないでしょう。

そこで、特別受益の持ち戻し免除の意思表示は、必ず遺言書において、明確に証拠が残る方法でする必要があります。

遺言書は、単に相続分を指定したり遺贈をしたりするだけではなく、特別受益の免除の意思表示にも利用できるので、遺産相続トラブルの予防には大変効果的です。

4. 特別受益の主張方法

最後に、特別受益の主張方法について確認をしておきましょう。

法定相続人の中に特別受益を受けた人がいても、誰も何も主張をせず単純に遺産分割協議を行った場合には、特別受益の持ち戻し計算は行われません。

特別受益を評価して持ち戻し計算をするためには、法定相続人のうちの誰かが特別受益の主張をしなければなりません。

特別受益の主張をする場合、まずは遺産分割協議の席でその主張をする人が多いです。

すると、受益者(と言われている人)が、実際に特別受益と主張されているような贈与があったのか、その価格などについて答えます。

このとき、受益者が特別受益分を認めて評価方法などについてもすんなり合意ができれば、その内容で持ち戻し計算をして、遺産分割ができます。

これに対し、受益者が特別受益を認めなかったり、認めたとしても財産評価方法などについて争いがあったりすると、さらに相続人間で話を詰めていかないといけません。

受益者が否定しているのですから、特別受益を主張する人は、ある程度特別受益を主張する根拠を示す必要もあります。

遺産分割協議では、特別受益についての対立が激しく妥協できない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行う必要があります。

遺産分割調停では、調停委員が間に入ってくれて特別受益の問題も含めて遺産分割の話し合いをすすめることができますが、それでもやはり特別受益についての意見が合わず、合意ができないことがあります。

すると、遺産分割事件は審判に移行して、審判官が特別受益の問題も含めた遺産分割方法を決定してしまいます。

審判の場合、特別受益があったと主張するものは特別受益の事実とその評価に関する資料を提出しなければなりません。

その結果、審判官によって特別受益があると認められれば、特別受益の持ち戻し計算をして遺産分割してもらうことが可能です。

まとめ

特別受益については、だいたい以上のような手続きになります。

今回の記事を参考にして、特別受益が問題になる事案でも上手に遺産分割の手続をすすめましょう。