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死亡退職金は相続税がかかる?取り扱いや注意点、弔慰金との違いを解説

親族が亡くなると、相続が開始されます。
その被相続人(亡くなった人)がサラリーマンの場合は、勤めていた会社から死亡退職金が支給されることもあります。

では、この死亡退職金には相続税がかかるのでしょうか。
ここでは、死亡退職金に相続税がかかるのか、またその取扱いや注意点にどのようなものがあるかなどを徹底解説します。

1.死亡退職金とは?支給されるための手続きについて

死亡退職金とは、被相続人が会社に在職中に亡くなった場合に受け取ることができる退職金です。

退職金については、すべての会社が支払わなければいけないものではないので、そもそも退職金制度のない会社もあります。退職金制度のある会社については、就業規則や退職金規程などの会社の規定に、退職金制度のある旨や、その計算方法などが記載されているのが一般的です。

そのため、被相続人の勤めている会社に退職金があるかどうか不明な場合は、就業規則や退職金規程などの会社の規定を確認しましょう。

死亡退職金を会社から支給されるためには、死亡届や死亡退職届などを会社に提出し、死亡退職金の請求を行うのが一般的です。ただし、会社により手続きや提出書類が異なる場合があります。

退職金の請求をする場合は、事前に会社の人事や総務などの担当者に確認を取りましょう。

2.民法と税法で死亡退職金の取り扱いが異なる

では、死亡退職金についてどのような取り扱いをするのかを見ていきましょう。

実は、民法と税法では死亡退職金の取り扱いが異なります。まず、会社では基本的に死亡退職金を誰に支払うのかを決めている場合が多いです。多くの場合、配偶者が受け取ります。

このように、死亡退職金は受取人が決まっていることから、民法では受取人固有の権利(元々持っていた財産)とされ、相続財産から除かれます。そのため、遺産分割の対象からも除かれます。

一方、税法ではどうでしょうか。

相続税法では、死亡退職金がたとえ受取人固有の権利であったとしても、被相続人の死後に引き継ぐ財産には違いないことから、被相続人の死亡後3年以内に確定した死亡退職金については、相続財産とみなし(みなし相続財産)、相続税の課税対象とされています。

3.死亡退職金には、非課税枠がある

被相続人の死亡後3年以内に確定した死亡退職金は、相続税の課税対象となります。

しかし、そもそも会社が死亡保険金を支給するのは、従業員が亡くなった後の遺族の生活を保障する意味合いが強いです。

そのため、死亡退職金を相続税の課税対象にするべきではないという考え方もあります。そこで、相続税では死亡退職金のすべてに税金をかけるのではなく、一定の非課税枠を設けています。非課税枠は、次の計算式で求めます。

死亡退職金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

では、いくつか具体例を見ていきましょう。

(1)法定相続人が、配偶者と子供2人の合計3人で、配偶者が死亡退職金を1,000万円受け取った

死亡退職金の非課税限度額=500万円×3人=1,500万円

受け取った死亡退職金の金額が非課税限度額より低いため、全額相続税の課税対象になりません。

(2)法定相続人が、配偶者と子供2人の合計3人で、配偶者が死亡退職金を1,000万円、子供2人がそれぞれ500万円、合計2,000万円を受け取った

死亡退職金は、受取人があらかじめ会社の就業規則などで定められている場合も多いですが、受取人が定められていない場合や、遺族が申し出ると変更できる場合があります。その場合は今回のケースのように、複数の相続人で分けて引き継ぐことができます。

では、この場合の非課税限度額を見ていきましょう。

死亡退職金の非課税限度額=500万円×3人=1,500万円

この非課税限度額1,500万円を、受け取る死亡退職金の金額により3人で按分します。今回は非課税限度額より、受け取る死亡退職金の方が多いので、相続税が課税されます。

それぞれの非課税枠、課税される死亡退職金の金額は次のとおりです。

①非課税枠
  • 配偶者:非課税限度額1,500万円×1,000万円/2,000万円=750万円
  • 長男 :非課税限度額1,500万円×500万円/2,000万円= 375万円
  • 次男 :非課税限度額1,500万円×500万円/2,000万円= 375万円
②課税される死亡退職金の金額
  • 配偶者:死亡退職金の金額1,000万円-非課税限度額750万円=250万円
  • 長男 :死亡退職金の金額500万円-非課税限度額375万円= 125万円
  • 次男 :死亡退職金の金額500万円-非課税限度額375万円= 125万円

(3)法定相続人が、配偶者と子供2人の合計3人で、配偶者が死亡退職金を1,000万円、長男500万円、次男500万円(相続放棄)合計2,000万円を受け取った

相続放棄をしている相続人がいたとしても、非課税限度額の計算で法定相続人の数に含めます。非課税限度額は以下のとおりです。

死亡退職金の非課税限度額=500万円×3人=1,500万円

この非課税限度額1,500万円を、相続放棄していない2人で按分します。

今回は、非課税限度額より受け取る死亡退職金の方が多いので、相続税が課税されます。

それぞれの非課税枠、課税される死亡退職金の金額は次のとおりです。

①非課税枠
  • 配偶者:非課税限度額1,500万円×1,000万円/(1,000万円+500万円)=1,000万円
  • 長男 :非課税限度額1,500万円×500万円/(1,000万円+500万円)=  500万円
  • 次男 :相続放棄のため非課税枠なし
②課税される死亡退職金の金額
  • 配偶者:死亡退職金の金額1,000万円-非課税限度額1,000万円=0円
  • 長男 :死亡退職金の金額500万円-非課税限度額500万円=0円
  • 次男 :死亡退職金の金額500万円-0円=500万円

次男は相続放棄をしているため非課税枠がなく、受け取った死亡退職金すべてが課税対象です。

4.法定相続人とは

死亡退職金の非課税限度額の計算には、法定相続人の数を使用します。死亡退職金の非課税限度額を計算するためには、法定相続人についての知識が必要です。

法定相続人とは、民法で決められている相続人のことです。被相続人が亡くなった時の遺族の構成によって、誰が法定相続人になれるかその順位が決まっています。

まず、配偶者がいる場合は必ず法定相続人になります。それ以外の相続人には順位があります。

配偶者がいる場合は、配偶者+順位の最も高い人が、いない場合は順位の最も高い人のみが法定相続人となります。

(1)第1順位 子

相続人に子がいる場合は、子が法定相続人となります。

(2)第2順位 父母(祖父母)

相続人に子がいない場合は、父母が法定相続人となります。

父母もいない場合は祖父母が代わりに法定相続人となります。

(3)第3順位 被相続人の兄弟姉妹

相続人に子や父母(祖父母)がいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となります。

5.弔慰金の取り扱いに注意

死亡退職金とよく似ているものに、弔慰金があります。しかし、弔慰金は死亡退職金とは取り扱いが異なります。

ここでは、弔慰金の取り扱いについて見ていきましょう。

死亡退職金が、従業員が今まで会社のために働いてくれたことに対する金銭の支払いであるのに対し、弔慰金は、名前の通り亡くなった従業員を弔い、残された遺族の慰めのために会社等から支払われるお金のことです。

弔慰金は、その性格上課税対象とするのは好ましくないと考え、原則、相続税が課されることはありません。ただし、世間一般の金額と比べて大きな金額の弔慰金の場合は、相続税の課税対象となります。

では、世間一般の金額と比べて大きな金額とはどの程度の金額なのでしょうか。これは、業務上の死亡とそれ以外とで基準が異なります。それぞれの基準は次のとおりです。

(1)業務上の死亡の場合

被相続人が亡くなった時に支給されていた普通給与の3年分に相当する金額

(2)業務上以外の死亡の場合

被相続人が亡くなった時に支給されていた普通給与の半年分に相当する金額

※普通給与は基本給や各種手当など、一般的な給与のことです。

例えば、被相続人が亡くなった時に支給されていた普通給与が月40万円だった場合は、

業務上の死亡の場合は40万円×12か月×3年=1,440万円、業務上以外の死亡の場合は40万円×6か月=240万円までは相続税が非課税で、それを超える分についてが課税対象となります。

6.死亡退職金の注意点

ここからは、死亡退職金の注意点を見ていきましょう。

(1)死亡後3年を超えて確定した死亡退職金の取り扱い

相続税の課税対象となるのは、被相続人の死亡後3年以内に確定した死亡退職金です。では、死亡後3年を超えて確定した死亡退職金の取り扱いは、どうなるのでしょうか。

死亡後3年を超えて確定した死亡退職金は、相続税の課税対象に含めず、受け取った人の所得税の課税対象となります。支給が確定した年の確定申告で、一時所得として所得税の計算をする必要があるので、注意が必要です。

(2)相続トラブルに注意

民法では、死亡退職金は受取人固有の財産とされているため、遺産分割の対象となりません。そのため、相続人の間で不公平感が生まれ、遺産分割がうまくいかない場合もあります。死亡退職金がある場合は、前もって対策を講じておく必要があるでしょう。

(3)死亡退職金の非課税枠の計算に使う法定相続人に注意

死亡退職金の非課税枠の計算には、法定相続人の数を使います。この法定相続人には、相続放棄した人も含むことは前述したとおりです。

相続放棄した人以外の注意点として、養子があります。被相続人に養子がいた場合も、死亡退職金の非課税枠の計算で法定相続人の数に含めて計算を行います。

しかし、法定相続人の数に含めることのできる養子の人数には制限があり、被相続人に実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までを法定相続人の数に含めることができます。計算間違いに注意しましょう。

まとめ

死亡退職金は、会社が亡くなった従業員のために支給する金銭のことです。民法上は相続財産になりませんが、税法上は相続財産とみなされます。

しかし、その性格上一定の非課税枠が設けられています。

死亡退職金がある場合は、その請求を会社にしたり、相続税の計算で非課税枠を計算したりする必要があるほか、さまざまな注意点もあります。

正しい相続税の計算をするためにも、死亡退職金がある場合は弁護士などの専門家に相談しましょう。