宅地の評価の基本!路線価方式による評価方法や計算方法を解説
その他相続財産の中に宅地がある場合は、その宅地がどれぐらいの価値を有するものなのか評価する必要があります。宅地の評価は原則、路線価方式によって評価します。
ここでは、宅地の評価の基本である路線価方式による評価方法や計算方法について、解説します。
目次
1.路線価とは
路線価方式とは、路線価によって土地を評価する方法のことです。
実は、土地の評価額には大きく分けて実勢価格、公示価格、固定資産税評価額、そして路線価の4つがあります。簡単に4つの評価額を見ていきましょう。
(1)実勢価格
実勢価格とは、不動産の需要と供給が合致する価額で、実際に取引されている価額のことです。単に「時価」という場合もあります。
実際の取引価額や周辺の取引事例、公的なデータなどから算出されます。
(2)公示価格
公示価格とは、国土交通省が公示する「標準地」の価格のことです。標準地とは、日本各地の住宅地、商業地、工業地など用途ごとの標準的な水準のある地点で、毎年、不動産鑑定士等が評価しています。
一般の土地取引の指標となったり、公共用地の取得価格を算定するときの基準となったりします。
(3)固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、市区町村等が評価する価額で、固定資産税などの税金を計算する基準となるものです。
3年ごとに評価替えが行われます。固定資産税評価額は、市区町村等が管理する固定資産課税台帳に記載されています。
(4)路線価
路線価とは相続税や贈与税の計算の基準となる土地(道路)の価額のことで、国税庁が毎年8月頃に発表しています。
道路に面する宅地1平方メートルあたりの評価額で、全国各地の標準値の公示価格や実勢価格などを参考に算出されます。一般的に公示価格の8割程度となっています。
1つの土地に4つの異なる価格があるので、「一物四価」と呼ばれています。
2.宅地の2つの評価方法
相続税や贈与税の計算のために宅地の価格を評価する方法として、路線価方式と倍率方式の2つがあります。
(1)路線価方式
路線価方式は、路線価を使った土地の評価方式です。市街地にある宅地は、基本、路線価方式で評価します。
宅地の評価は路線価×地積(土地の面積)で求め、後述する路線価図に記載されている路線価を使います。
例えば、路線価が200,000円、地積800㎡の宅地の評価額は、路線価200,000円×地積800㎡=160,000,000円です。
(2)倍率方式
倍率方式は、評価倍率表に記載されている倍率を使った土地の評価方式です。主に市街地以外にある宅地は倍率方式で評価し、宅地の評価は固定資産税評価額×倍率で求めます。
固定資産税評価額は、市区町村から送られてくる固定資産税の納付書や通知書に記載されています。
例えば、固定資産税評価額が6,000万円、評価倍率表に記載された倍率が1.1の場合、宅地の評価額は、固定資産税評価額6,000万円×倍率1.1=6,600万円となります。
3.路線価方式で評価をする前に必要なもの
宅地の評価の基本は路線価方式です。ここでは、路線価方式で宅地を評価する前に必要なものを見ていきましょう。
路線価方式の評価方法でも確認したとおり、宅地の評価は路線価×地積で求めます。
そのため、路線価と地積が記載されているものを用意する必要があります。
(1)路線価
路線価は路線価図に記載されています。路線価図は、以下の国税庁のHPから確認することができます。
◎財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
http://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm
都道府県をクリックし、該当する宅地の住所を選択して、路線価図を開きます。
(2)地積
地積とはその土地の面積のことで、登記簿謄本や測量図などに記されています。登記簿謄本や測量図に載っている地積が実際の宅地の面積と異なる場合は、評価時に実際の宅地の面積を測量等する必要があります。
4.実際に路線価方式で評価してみよう
宅地の評価は土地の形状などにより評価方法が異なりますが、基本となるのは1つの道路に面している宅地の評価です。
宅地の評価は路線価×地積で求めると述べましたが、実はもう1つ評価するための要素があり、それが「奥行価格補正率」とよばれるものです。
1つの道路にのみ面している宅地は、奥行が極端に短い場合や長い場合があります。奥行が極端に短い場合や長い場合は、そうでない土地に比べて利用しにくいため、評価を低くする必要があります。
評価を低くする補正するために用いるのが奥行価格補正率です。奥行価格補正率は、奥行きの距離と地区ごとによって決められています。
1つの道路に面している宅地の評価は次のようになります。
宅地の評価額=路線価×奥行価格補正率×地積
路線価が200,000円、地積800㎡の場合で奥行価格補正率0.98の宅地の評価額は、路線価200,000円×奥行価格補正率0.98×地積800㎡=156,800,000円です。
参考:奥行価格補正率表
地区区分
奥行距離 |
ビル街地区 |
高度商業地区 |
繁華街地区 |
普通商業・併用住宅地区 |
普通住宅地区 |
中小工場地区 |
大工場地区 |
4未満 |
0.80 |
0.90 |
0.90 |
0.90 |
0.90 |
0.85 |
0.85 |
4以上6未満 |
0.92 |
0.92 |
0.92 |
0.92 |
0.90 |
0.90 |
|
6 〃 8 〃 |
0.84 |
0.94 |
0.95 |
0.95 |
0.95 |
0.93 |
0.93 |
8 〃 10 〃 |
0.88 |
0.96 |
0.97 |
0.97 |
0.97 |
0.95 |
0.95 |
10 〃 12 〃 |
0.90 |
0.98 |
0.99 |
0.99 |
1.00 |
0.96 |
0.96 |
12 〃 14 〃 |
0.91 |
0.99 |
1.00 |
1.00 |
0.97 |
0.97 |
|
14 〃 16 〃 |
0.92 |
1.00 |
0.98 |
0.98 |
|||
16 〃 20 〃 |
0.93 |
0.99 |
0.99 |
||||
20 〃 24 〃 |
0.94 |
1.00 |
1.00 |
||||
24 〃 28 〃 |
0.95 |
0.99 |
|||||
28 〃 32 〃 |
0.96 |
0.98 |
0.98 |
||||
32 〃 36 〃 |
0.97 |
0.96 |
0.98 |
0.96 |
|||
36 〃 40 〃 |
0.98 |
0.94 |
0.96 |
0.94 |
|||
40 〃 44 〃 |
0.99 |
0.92 |
0.94 |
0.92 |
|||
44 〃 48 〃 |
1.00 |
0.90 |
0.92 |
0.91 |
|||
48 〃 52 〃 |
0.99 |
0.88 |
0.90 |
0.90 |
|||
52 〃 56 〃 |
0.98 |
0.87 |
0.88 |
0.88 |
※国税庁のHPより一部抜粋
ビル街地区や普通住宅地区などの区分は、路線価図に記載されています。
5.土地の形状により評価が変わる
宅地の評価の基本は路線価×地積でした。
しかし、上述した奥行価格補正のように、土地の形状によってその評価額を補正する必要があります。
補正後の価値が下がるものもあれば、2つの道路に囲まれて利用しやすい場合など、上がるものもあります。
補正が必要な宅地は以下のような形状のものです。
宅地の形状 |
行う必要のある補正 |
奥行きが短い場合や長い土地 |
奥行価格補正 |
角地・準角地※ |
側方路線影響加算 |
正面と裏面が道路に面している土地 |
二方路線影響加算 |
道路に面する部分(間口)が小さい土地 |
間口狭小補正 |
間口が小さいが、奥行きがある土地 |
奥行長大補正 |
長方形や正方形でない不整形な土地 |
不整形地補正 |
崖になっている土地 |
がけ地補正 |
※角地とは、例えば十字路やT字路に面している土地のように2つの道路に囲まれ、2方向に抜けられる土地のことです。
また準角地とは、例えばL字道路に面している土地のように、2つの道路に囲まれているが、一方向にしか抜けることができない土地のことです。
それぞれの補正には決められた補正率があり、その補正率を使って評価額を計算します。
2つの要素がある土地の場合は2つの補正率を使って計算するなど、その評価方法は複雑です。
上記で記載した形状の宅地がある場合は、相続の専門家に計算方法などを相談しましょう。
参考:奥行価格補正率等
6.その他の土地の評価方法
同じ宅地であっても、その土地を自分で使っているのか、人に貸しているのか、人から借りているのかなどによって評価方法が異なります。
今まで見てきた評価方法は、自分で使っている宅地(自用地)のものです。ここでは、借地や貸地の評価方法を見ていきましょう。
(1)借地権(借地)の評価方法
相続の際に被相続人が借りている土地がある場合は、土地自体の評価はしませんが、土地を借りて使用する権利である「借地権」の評価をする必要があります。
借地権は土地に建物を建てて使用するときに発生し、その土地を自用地として路線価方式などで評価した額に「借地権割合」をかけて計算します。借地権割合も路線価図に記載されています。
例えば、自用地の評価額が1億円で借地権割合が60%の場合、借地権評価額は以下のようになります。
借地権の評価額=自用地の評価額1億円×借地権割合60%=6,000万円
(2)貸地の評価額
他人に貸している土地は、正当な理由がないと賃貸契約を破棄できないなど、土地の利用に制限がかかるため、自用地よりも低い評価額となります。貸地の評価額は、自用地の評価額から借地権の評価額を引いた金額です。
つまり、1つの自用地の価額を借りる側と貸す側で分けて負担しているイメージです。
例えば、自用地の評価額が1億円で借地権割合が60%の場合、貸地の評価額は以下のようになります。
貸地の評価額=自用地の評価額1億円-借地権評価額(1億円×60%)=4,000万円
7.路線価方式で評価する場合の注意点
では、路線価方式で評価する場合の注意点について見ていきましょう。
(1)路線価図の見方を覚える必要がある
路線価図には、道路に面している土地の1㎡あたりの価額が記載されているだけでなく、ビル街地区や普通住宅地区などの地区の区分や借地権割合などが記載されています。
路線価図で必要な情報の読み取り方を理解するなど、まずは路線価図の見方に慣れる必要があります。
(引用元:http://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm)
(2)登記簿謄本や測量図に記載されている面積が現状と違う場合が多い
登記簿謄本や測量図は、所有者が変更する場合などがない限りは、最新のものに変更されません。
そのため、昔から所有者が変わらない宅地では、登記簿謄本や測量図に記載された当時と現状を比べると、面積が異なることも少なくありません。宅地の評価をする前には、必ずその面積等を測量しなおす必要があります。
(3)実際に現地に行き土地の状況を自分の目で確認する
先に述べたように、土地の形状によってその評価額を補正する必要があります。しかも、奥行価格補正や側方路線影響加算など補正の数もたくさんあります。
補正があるかどうかは測量図などを見てもわからないことが多く、測量したときから形状が変わっていることもあります。
そのため、遠い土地であっても、評価する前に現地へ行って土地の状況を自分の目で確認したほうが良いでしょう。
まとめ
宅地の評価の基本は、路線価に地積を乗じて求めます。しかし、土地の形状によって計算方法が異なったり、その土地が自用地なのか、借地、貸地なのかによっても計算方法が異なったりして複雑です。
ひとりで評価することは難しく、しかも場合によっては測量のしなおしなどが生じ、評価に時間がかかることもあります。
そのため、相続や贈与などで土地の評価が必要な場合は、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談しましょう。