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相続に必要な書類とは?預貯金や不動産など財産別に解説

親族が亡くなるとお葬式。これもいろいろ大変ですが、葬式の後の相続も色々と手続きが必要です。
相続手続きに欠かせない書類を必要な理由から詳しく解説します。

1.相続に必要な書類~各財産共通

相続に書類が必要になる場合としては、いろいろな場面があります。

特に大きいのが下記となります。

  • 不動産の登記やある種の動産の登録
  • 官公署・銀行などに引き継ぎの登録

こうした場合には、以下の書類が必要になります。

なお、言うまでもありませんが、もともと登録制度のない動産、例えば、絵画、骨董品、宝飾品等では、どこかに保管を依頼していたのでなければ、どれ程、高価であっても相続に書類は不要です。

(1)被相続人が亡くなっていることやどこの誰かを示す書類

①被相続人の戸籍謄本

これには死亡したことが記載されています。

死亡時のものだけです。

なお、戸籍に被相続人(亡くなった方)しかいない場合は除籍謄本になります。

②被相続人の住民票

これは亡くなっているので普通の住民票ではなく「除票」というものになります。

戸籍との関連づけが重要なので本籍の記載が必要になります。

これらの書類により、被相続人が亡くなっていること、どこの誰であるかが特定できます。

亡くなっていなければそもそも相続はないので、相続があったことを示す上ではいちばん重要な書類となります。

(2)相続したことを示すのに必要な書類

①遺言書がある場合

遺言書には公正証書遺言、自筆証書遺言と秘密証書遺言があります。

公正証書遺言は公証役場で作成し正本(原本は公証役場に保管されます。

正本は原本と同じ内容の公正証書です)は遺言者に渡されますが、その内容(原本)は公証役場等に保管されていますから、仮に正本が見つからなくても内容は確認可能です。

もちろん、遺言者が生きている限りは、他人は閲覧できません。

自筆証書遺言と秘密証書遺言では家裁(家庭裁判所)の検認も必要になります。

検認が請求されると、家裁は、相続人に遺言があることを知らせ、相続人立ち合いのもとに遺言書をチェックします。

これは、遺言の改変や偽造を防止するためのものです。

なお、封印のある遺言書は、家裁で開封するので勝手に開封できません。勝手に開封すると偽造や変造できる可能性が出てしまうほか、過料が課されることがあります。

秘密証書遺言は必ず封をしますので、これは勝手に開封してはいけないわけです。

自筆証書遺言でも通常は封をすると思われますので、要するに、遺言書らしきものが見つかった場合、速く内容を知りたくなると思いますが、むやみに開封してはいけないということです。

また、家裁の検認の申立てには、遺言者の父母の出生時から死亡時まで(つまり、生まれてから亡くなるまで)のすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本等、法定相続人の特定に必要な戸籍謄本が必要です。

この戸籍謄本を取る範囲はかなり広いのでしっかり確認しましょう。

②遺言書がない場合

遺言書がない場合は下記が必要となります。

  • 被相続人の出生時から死亡時まで(つまり、生まれてから亡くなるまで)のすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 法定相続人全員の戸籍謄本

これも法定相続人を確定するためです。

法定相続(民法の規定通りの相続)による場合はこれで基本的に足りますが遺産分割協議があった場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明も必要です。

これは、遺産分割協議に従って相続するため、その協議が法定相続人全員で行われていることを確認する必要があるからです。

特に様式はありませんが、いろいろな機関に提出する必要があるので財産別にまとめておくと便利です。

なお、相続人の話し合いで遺産分割協議がまとまらない場合もあります。その場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。

その場合は、調停調書が出ますので、この正本が必要です。

調停でも話がまとまらなかった場合は審判に移行しますから、その結論を記載した審判書が必要になります。

これらの場合、各機関に対して手続きをする場合はコピーを添付し正本を提示します。

2.相続に必要な書類~不動産

不動産の相続では、前項で挙げた書類に加え以下の書類が必要になります。

(1)相続した不動産の登記事項証明書

登記事項証明書はいわゆる「登記簿謄本」です。

これは、手続き上必要というよりは、不動産の現在の状況を知るために必要です。

例えば、ローンで購入している場合や借金がある場合、不動産に抵当権が設定されている場合があります。

これは登記事項証明書を見れば確実にわかります。

なお、借金があっても不動産に抵当権が設定されていない場合、登記事項証明書を見ても借金の状況はわかりません。

(2)相続した不動産の固定資産税評価証明書

固定資産税評価証明書は、相続登記の際の登録免許税を計算するために必要になります。

「登録免許税」ももちろん税金の一種ですが、これは登記手続きをするときに登記所に納付します。

(3)その不動産を相続した相続人の住民票

これは相続人の住所を知るために必要です。

(4)相続した不動産の権利証または登記識別情報

不動産の所有権の移転なのだから「権利証」が必要だと思われがちですが、実は、通常の相続では「権利証」は不要です。

「権利証」が必要になるのは、遺言で相続人以外の第三者に遺贈している場合です。

通常の相続では「権利証」は不要だという点は覚えておいてください。

なお、最近の登記では「権利証」は使われず「登記識別情報」が使われます。

3.相続に必要な書類~預貯金・国債・株式

(1)預貯金

預貯金の引き継ぎの場合、「1.相続に必要な書類~各財産共通」で解説した書類が必要です。

また、各金融機関で残高証明書を取るが良いでしょう。これはローン等も含め、残高がいくらかを明示するものです。

これをベースに遺産額が確定できます。この手続きに必要な書類は各金融機関で異なります。

ごく最近まで、預貯金は、可分債権とされ、相続が開始すると、各相続人は潜在的に法定相続分の割合に応じて相続すると取り扱われてきました。

しかし、最近の判例で預貯金であっても、相続に関しては不可分債権とされています。

このため、預貯金の引き継ぎには従来以上の厳格な手続きが必要になる可能性があります。

(2)国債

国債の引き継ぎの場合、基本的には見出し1の書類が必要です。

換金してもよいですし、名義変更することもできます。

(3)株式

株式の引き継ぎの場合も基本的には預貯金同様の書類が必要です。

但し、株式は相続人の口座に移し替えるのが原則です。

口座に移し替えた場合は換金もできますが、被相続人の口座にある状態では換金できません。

いずれにしても預貯金・国債・株式の引き継ぎは面倒なので、代表相続人が引き継いで、換金してから相続人に金銭として分割するのが簡便だと言えます。

4.相続に必要な書類~自動車・船舶

動産で登録制度があるものは少ないですが、代表的なものとして自動車・船舶があります。

また、船舶は総トン数20トン未満の小型船舶と総トン数20トン以上の船舶で手続きが異なります。

総トン数20トン未満の小型船舶では日本小型船舶検査機構で相続手続きを行います。総トン数20トン以上の船舶は国土交通省で相続手続きを行います。

自動車・船舶・航空機の中で比較的多いのは自動車の相続でしょう。

これも基本的には「1.相続に必要な書類~各財産共通」で挙げた書類が必要です。

また、船舶同様、軽自動車の場合と普通自動車の場合で若干の違いがあります。

まず、軽自動車の場合は、居住区域の軽自動車検査協会の事務所または支所で手続きします。

一方、普通自動車の場合は、陸運局やその支局で手続きします。

また、自動車の名義変更固有の書類として、「居住区域の軽自動車検査協会(事務所もしくは支所)または陸運局に提出する移転登録申請書」が必要です。

さらに、下記も必要となります。

  • 車検証
  • 手数料納付書

また、自動車の使用を継続する場合で使用場所が異なる場合は

  • 自動車保管場所証明書(いわゆる「車庫証明」)

が必要です。

なお、遺産分割協議の場合、査定額が100万円以下の自動車に関しては、「遺産分割協議書」ではなく、「遺産分割協議成立申立書」という簡略化された書類を提出することができます。

この場合、手続きは自動車を相続する相続人が単独で行うことができます。

そのため、当該自動車を相続する相続人以外の印鑑証明書は不要になります。

なお、自動車の場合、相続しても使わないとか基本的に廃車にするというケースも多いと思います。

そうした場合でも手続きはきちんと行う必要があります。

特に相続放棄や限定承認を行う場合、相続財産の全部または一部を処分すると単純承認とみなされるという民法921条の規定(法定単純承認)に注意が必要です。

つまり、相続放棄や限定承認を行う場合、相続財産に勝手に手を付けてはいけないわけです。

最悪、相続財産を処分したとして、債権者から債権の弁済を求められるおそれもあります。

一般的には、査定価値のゼロまたはマイナス(引き取りに費用を請求される)の場合、自動車の廃車処分を行っても、民法921条の処分とはみなされませんが、債権者が処分だと強硬に主張してくるおそれはあります。

また、査定価値のゼロまたはマイナスだからと言って、そのまま使い続ける場合も同様です。

まとめ

相続関係の書類は、基本的には相続人(の方々)が揃えることのできるものです。

ただ、非常に広範囲の親族について戸籍謄本が必要になったり、手続きに不備があると面倒なこともあります。

相続に強い弁護士なら、予期せぬトラブルを避けたり、必要な専門家を紹介してもらえるので安心です。