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相続時精算課税制度とは?手続き方法と暦年課税制度の違いを解説

所有している財産を子供や孫、配偶者などに引き継ぐ方法として、生前の「贈与」と死後の「相続」の2つの方法があります。

どちらの方法であっても、親族等に財産を引き継ぐことには変わりありませんが、贈与には贈与税が、相続には相続税がかかります。
実はこの贈与と相続を一体化させた制度があります。

それが「相続時精算課税制度」です。
今回は相続時精算課税制度を基礎から徹底解説します。

1.相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは簡単にいうと、祖父母や父母などから生きているうちに財産を贈与されたときには、贈与税をかけずに、死後の相続時に生前贈与分を含めたすべての財産に相続税をかける制度です。

相続時に生前贈与分を精算し、相続税を課税する制度なので、相続時精算課税制度といいます。

生前の贈与時に贈与税がかからないので、贈与がしやすくなる効果があります。

ただし、贈与する相手や金額などに一定の制限を設け、贈与する必要のない財産を関係のない人に引き継ぐことができないようにしています。

2.相続時精算課税制度の詳細

相続時精算課税制度は、贈与する相手や金額などに一定の制限を設けています。

ここでは相続時精算課税制度の対象者や必要な手続きなどの詳細を解説します。

(1)相続時精算課税制度の適用対象者

まず、相続税や贈与税には登場人物として、財産を贈与する人と贈与される人の2人が存在します。

もちろん税金を納めるのは、財産を受け取った人です。

相続時精算課税制度は、よく財産を贈与する側の手段として描かれることが多いですが、相続時精算課税制度を利用する人は、あくまで財産を受け取った人になるので注意しましょう。

財産を贈与する人が複数いる場合は、財産を受け取った人が、贈与する人ごとに相続時精算課税制度を利用するかしないかを選択できます。

例えば、祖父と祖母から贈与を受けた場合、祖父と祖母の両方分に相続時精算課税制度を利用することもできれば、祖父の分だけ利用するということも可能です。

また、財産を贈与する人(贈与者)と贈与される人(受贈者)には次の要件があります。

贈与者:贈与した年の1月1日で60歳以上の父母または祖父母

受贈者:贈与を受けた年の1月1日で20歳以上の子供※1または孫※2

※1 相続時に相続人と推定される人に限る

※2 相続時に相続人と推定される人でなくても良い。ただし相続時の相続税が高くなる

(2)非課税限度額

贈与財産の合計が2,500万円までは非課税で、2,500万円を超える分は一律20%の税金がかかります。

また、贈与する財産の種類や回数などに制限はありません。

そのため何年にわたって贈与してもかまいませんが、非課税枠は合計で2,500万円までです。

(3)相続時精算課税制度の手続き

相続時精算課税制度は、贈与があったことに対し、受け取った人が制度を利用するかどうか選択します。

税務署ではその制度を利用しているのか、していないのかを把握することができないため、相続時精算課税制度を利用した旨を届ける必要があります。

また、贈与を受けているので贈与税の申告をする必要もあります。

贈与を受けた人が、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に「贈与税の申告書」「相続時精算課税選択届出書」を所轄税務署に提出します。

また、受贈者の状況により「受贈者の戸籍謄本」や「受贈者の戸籍の附票」「贈与者の住民票」などの添付書類も一緒に提出する必要があります。

3.暦年課税制度と相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は贈与と相続を一体化させた制度で、いわば贈与税の特例のような制度です。

これとは別に通常の贈与があります。

これを暦年課税と呼びます。

暦年課税制度と相続時精算課税制度は、うまく使い分けることで多くのメリットを受けることができます。

そのためにはまず、それぞれの違いを把握しておく必要があるでしょう。

ここでは暦年課税制度と相続時精算課税制度を解説します。

(1)贈与者・受贈者 

相続時精算課税制度の場合は、上述した通り、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子供又は孫への贈与に限られます。

これに対し、暦年課税制度の場合は贈与者・受贈者ともに親族だけでなく、第三者であってもよく、制限などはありません。

(2)非課税限度額

非課税限度額も暦年課税制度と相続時精算課税制度とで異なります。

暦年課税制度の場合は「毎年」110万円まで、相続時精算課税制度の場合は相続があるまでに「合計」で2,500万円までです。

単年と合計の違いがあるので注意が必要です。

(3)税率

暦年課税制度の場合は、贈与された金額が多ければ多いほど税率が10%から55%までの間であがります。

相続時精算課税制度の場合は2,500万円を超えた部分に一律で20%となっています。

(4)贈与税の申告

暦年課税制度は、非課税限度額の110万円までの贈与の場合は申告自体不要です。

相続時精算課税制度は、非課税限度額の2,500万円までの贈与であっても贈与税の申告が必要です。

また、相続時精算課税制度の場合は、財産を受け取った人が、財産を贈与する人ごとに選択するため、「相続時精算課税選択届出書」や添付書類も申告書と一緒に提出の必要があります。

(5)相続時の課税

暦年課税制度で贈与した財産は相続時に加算することはありません(相続時前3年以内のものを除く)。

そのため、相続時は相続した財産のみ課税されます。

一方、相続時精算課税制度は贈与財産を相続財産に合算して課税されます。

このときの贈与財産は、贈与時の時価で評価します。

4.相続時精算課税制度のメリット

ここからは、相続時精算課税制度のメリットについて解説します。

(1)2,500万円までの控除がある

相続時精算課税には合計2,500万円までの控除があり、贈与者や受贈者などの要件を満たすのであれば、この範囲内の贈与なら、贈与税がかかりません。

一方、暦年課税の場合は1年間で110万円の控除しかないので、ある程度まとまった金額の贈与をしようと考えている場合は、相続時精算課税制度を利用したほうが贈与税は安くなります。

これから親族等への財産の引き継ぎに、生前の贈与を考えている場合は、相続時精算課税制度の利用も考慮したほうが良いでしょう。

(2)贈与が2,500万円を超えて、贈与税がかかっても暦年贈与より税額が低い

2,500万円を超える贈与であっても、相続時精算課税制度のほうが暦年贈与より贈与時の税額を低く押さえることができます。

例えば3,000万円の贈与をした場合、相続時精算課税制度では2,500万円を差し引いた残りの500万円に20%の税額がかかります。

対する暦年課税制度では、3,000万円から110万円の控除を引いた額に約50%もの贈与税がかかります。

そのため、2,500万円を超える贈与をする場合で贈与時の税金を抑えたい場合は、相続時精算課税制度を選択したほうが良いでしょう。

(3)相続時に値上がりする資産に利用する

価格が変動している資産を所有していて、その資産が明らかに将来値上がりする可能性が高い場合は、相続時精算課税制度を利用してあらかじめ生前に贈与しておくことで、相続税を節税することができます。

相続時精算課税の場合は贈与を行った時だけでなく、その後の相続時に財産に含めるときも「贈与時の価値」で税金の計算をするためです。

そのため、価値が上がることが確実な資産はあらかじめ生前に贈与をし、相続時精算課税制度を利用した方がよいでしょう。

(4)遺産をめぐるトラブルを防ぐ

相続時精算課税制度の税金面以外のメリットとして、遺産をめぐるトラブルを防ぐということがあります。

これはあらかじめ財産を引き継ぎたい人に生前贈与することで、死後に遺産の分割をめぐるトラブルを防ごうというものです。

暦年贈与による生前贈与も可能ですが、金額の大きい財産を生前に贈与する場合は、相続時精算課税制度を利用することをおすすめします。

(5)収益を生む資産を贈与すれば、相続税対策になる

例えば、賃貸アパートのように収益を生む資産は、そのまま持っていると毎年の収益が現金預金として蓄えられ、それがまた相続財産となります。

収益を生む資産をあらかじめ生前贈与しておけば、毎年の収益は贈与を受けた人の資産となるので、相続税の対象にはならず、相続税対策になります。

5.相続時精算課税制度のデメリット

以上、相続時精算課税制度のメリットについて解説してきました。

ここからはデメリットについても解説します。

(1)申告が必要

相続時精算課税制度では、贈与時も相続時も申告が必要です。

必要書類をそろえたり、申告書を作成したりと手間がかかります。

(2)暦年課税に戻せない

一旦、相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税に戻すことができません。

長い間に渡って贈与を行う場合は、暦年課税の方が有利になることもあるので、相続時精算課税制度を選択する場合は注意が必要です。

(3)後に相続税が必要

相続時精算課税制度は、贈与時には贈与税がかかりませんが、相続時に贈与分も含めた財産全てに相続税がかかります。

暦年課税で相続した財産について、相続時には相続税がかからないため、相続時精算課税制度を選択する場合は、今後いくらの贈与をするのか、相続時にはいくらの相続税がかかるのかなど、今だけではなく将来も見据えたシミュレーションなどが必要です。

(4)小規模宅地等の特例が使えない

居住用の土地や事業に使っている土地などがある場合に注意しなければならないのが、小規模宅地等の特例です。

これは、相続財産の中に一定の居住用の土地や事業に使っている土地があり、一定の相続人が引き継いだときに、その評価額を大幅に減額してくれるという制度です。

相続時精算課税制度を選択すると、この特例が使えずに相続税が高くなる可能性があるので注意が必要です。

(5)物納ができない

相続時精算課税を使って生前贈与された財産は、物納することができません。

相続税を納めるための資金を用意しておく必要があるので、注意が必要です。

(6)登録免許税や不動産取得税が高い

登録免許税と不動産取得税は生前贈与の場合と相続の場合で税率が異なります。

生前贈与の方が高く設定されています。

そのため、生前贈与の方が費用は多くかかります。

①生前贈与
  • 登録免許税   固定資産税評価額の2%
  • 不動産取得税  固定資産税評価額の3%
②相続
  • 登録免許税   固定資産税評価額の0.4%
  • 不動産取得税  なし

まとめ

今回は相続時精算課税制度について解説しました。

見てきた通り、相続時精算時課税制度はうまく使えば、多くのメリットがあります。

しかし、相続税の申告が必要だったり、使い方を間違うとデメリットがあったりと、相続時精算時課税制度を利用する場合はあらかじめのシミュレーションなどをしっかり行う必要があります。

そのため、相続時精算時課税制度を利用しようとお考えの方は、できるだけ早く弁護士等の専門家に相談しましょう。